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The evening

遅れ過ぎもいいところで今更ですが、鋼牙の誕生日を。
平穏な時間?
こんなだったらいいな~ と、どうしても思ってしまうのです。
今回はザルバもゴンザさんも出てこない、二人だけのミニ作文ですが、毎日遊びに来てくださってる皆様に心からの感謝を込めて。
少しでもほんわかしていただけたなら、嬉しいです。



   ・・・ The evening  ・・・
                           
今夜は特に急ぐ仕事も無く、晩飯を食べ風呂から上がると、水のボトルを片手に先に上がったカオルの待つ寝室へ向かう。

ふっ・・・
階段を登る足元を見ながらも頭に浮かぶのは今朝からのカオルのこと。
仕事の絵を描いていなければ屋敷に居る間俺の側に居るのはいつものことだが。
数年前から。
誕生日に欲しい物は特にない、そう言ったあの年から。
だったら・・・ と。
俺の誕生日、つまり今日は屋敷に居る間中朝からずっとカオルが俺の側に。

普段と同じ、特に何をするというわけではないけれど・・・
昼間、ソファーに座って本を読んでいるすぐ横に座り、スケッチブックを広げ俺を描いていて。
そして、ゴンザが作った晩飯を何気ないことを話しながら食べて。
最後に、気を利かせたゴンザの作ったバースデイケーキを共に囲んで。
振り向くと、顔を上げると、いつもそこには優しい眼差しのカオルの笑顔があった。

何も起こらない。
だけれど、心穏やかな一日。

ああ・・・ 幸せ、っていうのは・・・

ガチャ

「あ、鋼牙」

ベッドの上で上掛けに包まって、カオルが膝を抱えて座っている。

「どうした、せっかく風呂で温もったのにまだ寝ていなかったのか?」

「ん~~ だって~」

「・・・?・・・」

「んふっ だって鋼牙の誕生日だし、先に寝るのはちょっと、ね」

「そうなのか?」

「うん、そうなの」

ベッドに腰掛けて水を飲み、サイドテーブルに置いて足を上げかけた俺の背中にカオルが腕を回し抱きついてくる。

「カオル?」

「ごめんね、今夜はそばに一緒にいるしかできなくなっちゃった。
 誕生日なのに、ほんとごめんね」

「カオル・・・ 自然なことなんだからお前が気にしたり謝ることじゃないだろう?」

「ん~ でもね」

「いいから」

肩越しに俺の顔を覗き込んでいるカオルの頬に手を添えて軽く口付ける。

「さあ、寝よう」

「・・・うん」

胸に回されている腕を軽く撫でて、腕が外れていくのを目で追いながら足を上げ、カオルが被っていた上掛けを元に戻して。
身体を横たえようとした俺の腕、パジャマが、まだ座ったままのカオルに引っ張られる。

「どうした?」

「ね、たまには寝る場所、かえっこしない?」

「・・・?・・・ それは構わないが・・・」

「じゃ、鋼牙、今夜はこっちね。
 はい、枕も替えて・・・と」

「・・・?・・・」

ぱふっ

枕と場所を入れ替えると、仰向けに、腕を広げ大の字に寝たカオルが俺の顔を見あげてイタズラっぽい目をして笑って、いる。

「カオル?」

「ほ~ら」

「・・・?・・・」

「来て」

「は?」

「だ~か~ら~ ここ」

「え?」

「ここに・・・ 来て」

身体を少し横向きにしたカオルが自分の左腕を右手で叩いている。

「・・・まさか」

「今日は鋼牙の誕生日で。
 でも、鋼牙はいつも何もいらないって言うでしょ?
 だからって今日はわたし、急にこんなだから・・・
 でね、考えたの。
 いつもわたしがしてもらってばっかりだから~ 
 今夜はわたしが腕枕してあげよう、って。 
 ね、ほら、来て! 早く!」

「・・・カオル」

「嫌なの?」

「嫌じゃない!」

「だったら~~ こ~うが」

「ああ」

上掛けを被りながらカオルの横にもぐりこみ、パジャマに隠れた細い腕になるべく重みが掛からないよう枕の位置を直す俺を、いつもは俺がカオルにするように。
腕を回されカオルの胸の中に抱え込まれる。

「鋼牙、ど?」

「ああ・・・ 温かいな」

「それだけ?」

「いや・・・ 柔らかい、それと・・・」

「何?」

「今夜はよく眠れそうだ」

「そう、そっか・・・ よかった」

「カオル・」

「鋼牙、誕生日、おめでとう」

抱えられ、耳元に囁くような声で今日何度目かのおめでとうを言われて。

「ああ、ありがとう」

おれも何度目かの礼を言う。

「・・・おやすみ、鋼牙」

カオルは今、どんな顔をしているんだろう。
見たいな、と思ったが・・・
髪の上にそっと落とされたカオルからのおやすみのキスに優しく封じ込まれて。

「・・・ああ、おやすみ」

素直に。
カオルの甘い匂いに包まれたまま俺も腕を回して抱きしめ合って。
そのままそっと目を閉じ、ゆっくりと意識を手放した。



作文1 | コメント(4) | トラックバック(0) | 2016/03/14 00:00
コメント
Mion様
どうも~ こちらこそ、お久しぶりでございます & 返信が遅れ、申し訳ございません。

わ~お、ドツボだなんて。
そんな~ むっふっふ 嬉しいかも。 
さて、今回は 『「待った!」をかけられた狼』というより 『自然の摂理に逆らえず「待った」になっちゃった狼』っていうのが真相なのですが、そんなことはまぁ~ね~ 些細なことかもかも。
ふんわり~ で優しい穏やかな時間を感じてもらえたなら私こそ・・・
『あぁ~幸せです』
(*^_^*)
しおしお様
>優しい、やさしいお話し
苛烈な戦いに身をおいている鋼牙だからこそ二人の時にはこういう時間を過ごしていて欲しい、ささやかだけど二人の穏やかな時間を感じて欲しかったので、そう言ってもらえるのが何よりも嬉しいです。
ありがとうございます。
hana72 様
ホワイトデーのドタバタとこのおはなしと、どっちにしようと迷って時間の関係でこちらにしたんですが・・・
正直あまり受けは良くないだろうな~と思ってたので、あたたかいコメント、ありがとうございました。
嬉しいです~
茅 様
>何も無いけれど、穏やかな時間…
ありがとうございます。
二人一緒の時ぐらい穏やかな時間が流れてて欲しいな、と思ってるので、そう言ってもらえるのがとっても嬉しいで~す。

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