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Swallow

Category: 作文1  

見上げると青い夏空を独特のフォルムをした黒い塊がかなりのスピードで飛び交ってて。
一番子に続いてニ番子も、って頃ですね。
野生の動物はたいがい皆、そうかもしれないけど・・・
ツバメのように働き者で、そして過酷な一生を送る鳥もそうそういないな、って思うのは管理人だけでしょうか。
前置きはさておき、それでは久しぶりの冴島家へと行ってみるといたしましょうか。
いつもどおり、そう~っと、そう~っと・・・





 
   ・・・ Swallow ・・・
                       <8.18.2014>

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ああ、ただいま・・・  ゴンザ、カオルは?」

「カオル様でしたら朝食の後、スケッチブックを持ってお出かけになられました。
 お昼までには、と仰っておいででしたのでもうそろそろお戻りか、と」

『お? 鋼牙~ どうやら噂をすれば、のようだぜ』

「・・・・・・」

「ゴンザさん、ただいま~  あ、鋼牙も今帰ったところなんだ~」

「ああ、ただいま」

「うん、おかえり、って・・
 もう~ 鋼牙ってば、わたしのほうが後に戻ったんだよ~」

ふっ そういえばそうか・・ なら。

「おかえり、カオル」

「うん! ただいま」

言い直した俺の側に来て、目の前、下から満面の笑顔で見上げるカオルに 「ただいま」 と言われ、口元が自然と綻ぶ。

「鋼牙?」

「ああ、なんでもない」

『ふっふっふ・・ なんだか平和だな~ なぁゴンザ』

「そうでございますな~
 さあさ、お二人共、お昼の用意ができております、どうぞお部屋の方へ」

「はぁ~い。
 うふっ 今日のお昼は何かなぁ~ 楽しみだね、鋼牙、早く行こ?」

「ああ、そうしよう」


ゴンザの用意した昼飯を食べ終え。
今日は特別にこれといって特に急ぎの用事の無い俺は、カオルが当分仕事の予定がないのを知っていたこともあって、昼飯の後は久しぶりにそのままのんびりと一緒に過ごせるものだと思っていた。
だが、カオルはゴンザに頼んで用意してもらったらしいバスケットと戻ってきた時に持っていたスケッチの道具一式を抱えて、これからもう一度出掛けると言う。

「どうした、何か気に入ったものでもあったのか?」

「うん、そうなの。
 ここからすぐ近くなんだけどね、どうしても一気に描いてしまいたくて。
 大丈夫、遅くても夕方までには終わると思うし、描き終わったらすぐに帰ってくるから」

「そうか・・・」

「うん。
 じゃ、鋼牙、ゴンザさん、行ってくるね」

「ああ」

「いってらっしゃいませ、カオル様」


カオルが出掛けて。
リビングのソファーに座って本を読んでいたんだが・・・
どうやら無意識のうちにいつもカオルの座っている辺りを時々目で追っていたらしい。

『鋼牙ぁ、カオルに振られて残念だったな~
 ふふっ お前さん、もしかしなくても一人でいるのが寂しいんだろう~』

まさに不意打ち。
正直なところ、本音に近い部分をいきなり突っこまれて、それを素直に認めるのは、なんだか敗けを認めるようで癪に障るというかなんというか・・
だから精一杯言葉少に言い返してみた。

「・・・べつに、俺は振られてなどいないし寂しいわけでもない」

が、しかし・・・

『ふ~ん そうかそうか、武士の情けだ、そういうことにしておいてやるよ。
 まったく、素直じゃないな、さっきからチラチラ見るばかりしているくせに・・

「おい、何か言ったか?」

『い~や、なんにも』

「・・・・・・」

『クックックッ・・・』

所詮、口でこいつに敵うわけがない。
ザルバの突っ込みはそれきり無視して再び本に視線を戻してはみたが、やはりあまり集中できない。
だから、気分を切り替えるためにも久しぶりに地下の鍛錬場に向かい、頭の中を空にして気を集中し、一心不乱に身体を動かす。

どれくらい経っただろう・・・ 
ふと、部屋の扉が開いた気配に気付く。

「鋼牙様・・」

動きを止め声のする方に目をやると、ゴンザの手元、トレイの上には見慣れた赤い封筒が。
剣を戻しながら歩み寄り、手にとった封筒に魔導火を点けて、中に浮かぶ指令に目を通す。

「ゴンザ、すぐに出掛ける。
 カオルが戻ったら、今夜は先に寝るよう言っておいてくれ」

「畏まりました」

コートを纏い玄関を出ると、気持ちを切り替え真っ直ぐ前を向いて歩き始める。



「ん~~ 巣に戻ってる時以外ってずっと飛んでるから難しいなぁ~
 わたし、動物ってあんまり描いたこと無いんだよね~
 あっ! 戻って来た。
 
 えっ うわっ わわっ もう行っちゃったよ~
 う~ 鋼牙には夕方までには終わるって言っちゃったのに・・・
 でも、今はそんなこと言ってる場合じゃないよね、頑張らなくちゃ。
 わぁっ もう戻って来た。
 お願い~ 忙しいのはわかるけどちょっとだけでいいからゆっくりして~~」



ガチャリ・・

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

たぶんもう丑三つ時をとうに過ぎた時間のはずだが、ドアを開けるといつもと変わらぬ様子でゴンザが出迎えてくれる。

「ただいま、ゴンザ、いつも遅くまですまないな」

「いえいえ、どうということはございません。
 鋼牙様こそご苦労様でございます」

「悪いが俺は今夜はもうこのまま寝る、だからお前ももう休んでくれ。
 それと、明日の朝はゆっくりで構わないから」

「はい、承知いたしました。
 それでは鋼牙様、失礼致します、おやすみなさいませ」

「ああ、おやすみ」

コートを持ったゴンザが下がり、少し疲れてはいるが身体の汚れを落とすため風呂場に向かう。
汚れを洗い流し湯船に浸かっていると、見上げた窓いっぱいに広がる大きな満月が目に入る。

そうか、今夜の月はスーパームーンというのだとゴンザとカオルが朝飯の時に話していたな。
一緒に見たいね、と言われたのに。
カオルは・・ この月を、ゴンザと一緒に寝る前に見たんだろうか・・・

湯の中で身体を伸ばしながら、ふとそんなことを思い出し、考えてしまう。

いくら考えてもしかたのないことだ。
夜も遅い、もうさっさと寝よう。

風呂から上がり、キッチンの冷蔵庫から取リ出した水のボトルを飲み、持って階段を上がり、いつものように寝室に入る前、書斎の机の上の箱にザルバをしまおうと、中に入れて蓋に手をかける。

「ザルバ、先に風呂に入って悪かったな、朝までゆっくり休んでくれ」

『ああ、言われなくてもそうするさ。
 ところでだな~』

蓋に手をかけている俺にザルバが何か言いたそうに?

「なんだ」

『今夜の相手はそんなに疲れるようには思えなかったが・・・
 お前さん、本当にまだ気がついてないのか? 
 俺様にはそこ、机の上の本の上に何か置いてあるような気がするんだがな~』

机の端に視線を走らせると、ザルバの言う通り積んである本の上に葉書くらいの紙が1枚置いてあるのが目に入る。
腕を伸ばし、手に取って見てみる、と。

「これ、は・・・ツバメ?」

雛の待つ巣に戻ってきて、今まさに飛んでいる状態から巣に足を掛けようとしている親ツバメの絵。

『それって、カオルが描いたものなんだろう?』

「ああ、たぶん。
 しかし・・・ どうしてツバメの絵を・・・」

『それは明日にでもゆっくりカオルに訊いてくれ。
 おい鋼牙、いいかげん俺様を寝かせてくれ』

「そうだったな、すまない、悪かった」

『いいさ、気にするな、じゃあな』

「・・・・・・」

左手に絵を持ったまま右手で蓋を閉め、立ったままでしばらく絵を見つめて考えてみたが、どうしてカオルがここにツバメの絵を置いているのか全くわからない。

カオル・・・

寝室に入ると、ベッドの上で穏やかな寝息を立てるカオルから目を離さずに後ろ手で静かにドアを閉め、足音を立てないようにベッドサイドまで歩いて行く。
しばらく寝顔を見ていたが・・ 
ここまで持ってきてしまった絵をサイドテーブルに置いて、ベッドに上がり静かに隣に身体を横たえる。

「ん・・・」

少しの揺れに反応して寝返りをうったカオルが俺の方に横向いたのを、腕を回しそっと抱き寄せ、やんわりと抱きしめる。

「・・・こ・・・が・・・?」

「ああ、起こしたか・・ すまないカオル」

「うう・・ん・・・お・・・か・え・・り・・・」

「ただいま・・・ カオル、一つだけ・・・ いいか?」

「ん・・・」

「どうして、あの絵を?」

「ん~~  絵? あ・・れ・・は・・・」

「うん?」

「かえ・・・て・・・くる・・・か・・ら・・・」

「・・・・・・」

「まい・・とし・・・ か・・な・・・らず・・・ かえ・・・て・・く・・・るか・・ら・・」

「帰って・・くる?」

「そ・・・う・・・ だか・・・ら・・・お・・・ま・・も・・・り・・・
 ごめ・・・ ねむ・・・い・・・」

「ああ、すまなかった、カオル・・・ もう、おやすみ」

背中にまわした手でゆっくりと背中を撫で続けてやると、ほんの少しだけ浮上しかけていたカオルの意識がまたゆっくりと沈んでいく。

「ん・・・お・・・や・・・す・・・・・・」

途中やめになった言葉の形のままの口から再びゆっくりと寝息が零れ始める。

そうか・・ そうだったのか・・・
遠く長く辛い旅をして、命尽きるまで必ず毎年同じ巣に戻ってくるツバメ。
そんなツバメだから俺にと、お前は願いを込めて描いてくれたのか・・・

「カオル・・・ ありがとう・・・」

腕の中のカオルの髪におやすみのキスを落とし、サイドテーブルの上の絵を視線の中に閉じ込めて。
俺もまた意識を手放すためにゆっくりと目を閉じた。


 2014_08_19

Comments

しおしお様 

いや~ 喜んでいただけで何よりです。 というか、ありがとうございます。 自分としてはほんとに頭が動いてないもんで、ムムム・・ とか思ってたもので。
それにしても、ザルバはやっぱりザルバです。 ああでなくちゃね。 
うふふ (^_^)
なな  URL   2014-08-22 18:11  

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