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Before the birthday that 

2012.10.13(00:00)

ゴンザ、零、カオル、鋼牙 with ザルバ。
カオルは友達の結婚式に行くんですが、その時周りの人達は・・・ 

※ 10月16日と、25日に、加筆しました。




   ・・・ Before the birthday that ・・・
                                     <10.12.2012>


♪ キンコーン

玄関ドアのチャイムを鳴らし、少し待った後開いたドアの中から覗いたのは、いつも通りかっちりと執事のユニフォームを着こなしているゴンザさんの姿。

「やっ ゴンザさん、こんにちは。 久しぶりだね」

「これは零様、ようこそ、いらっしゃいませ」

人懐こい笑顔を見せながら軽く頭を下げるゴンザに、早速目的の人物がいるかどうか訊ねてみる。

「ね、鋼牙居る?」

「申し訳ございません、あいにく鋼牙様はお仕事で朝から出掛けております。
 帰りも、今夜はたぶん遅くなるだろう、とおっしゃっておいででした」

え? 鋼牙、いないのか・・・

「あちゃ~ そうなんだ~ 昼ご飯の後だから居ると思ってたのにな、残念」

「おや? 今日はカオル様でなく、鋼牙様に御用事がおありだったのですか?」

素早く俺の手元を見ているだろう優秀な執事は、少し驚いたように疑問の問いを俺に向ける。

「うん、そう、ちょっと鋼牙とザルバ、両方の意見を聞きたかったんだよね。
 まあ、アポ無しで来た俺が悪いんだし? 仕事でいないんじゃしかたないか。
 じゃあさ、調べ物だけでもしたいから、ゴンザさん手伝ってくれない?」

代々続く黄金騎士の家、冴島家には魔界やホラーに関する古今東西から何代にもわたって集められた書物がある。
しかも、この優秀な執事がいれば、たとえ鋼牙がいないとしても今俺が求めている情報の何がしかはたぶん見つけることができるだろう。

「よろしゅうございますよ。
 私でお役に立つ事でしたらなんなりとおっしゃってください。
 ささ、ここではなんですから、とりあえず中の方へどうぞ。
 まずはお茶をお淹れいたします」

「うん、サンキュ~ それと、はい」

今日の一番の目的は鋼牙と調べ物だったけど、だからってカオルちゃんのことを忘れたわけじゃない。
それに、甘いものをほとんど取らない鋼牙を尻目に、カオルちゃんと二人楽しむひとときは俺にとって・・・

スイーツ好きにとっては待ちに待った季節、秋の食材を使った限定もののケーキ類を買い揃えて持ってきていた俺は、手土産だと言ってケーキの箱を渡すと、礼を言うゴンザさんの後について、リビングに行く。
ソファーに座っていると、お茶を淹れてくれるゴンザさんの口から、鋼牙だけでなくカオルちゃんまでいないということを聞かされる。

「え~! カオルちゃんもいないの?
 あ~~あ、調べ物のためだけど、久しぶりに鋼牙ん家来たのにな~
 鋼牙はともかく、まさかカオルちゃんまでいないなんて、ちょっとショックかも」

「申し訳ございません、零様。
 今日カオル様は、零様と入れ違いと申しますか、ポート・シティに行っておられまして」

「え? そうなんだ。
 それって、いつもの画材のお店にでも行ってるの?」

「いえ、今日は大学時代のお友達の結婚式でございます。
 そうですね、時間的には1時間後ぐらいでしょうか? 教会で式がありまして、
 終わった後は場所を移して夕方から最近流行りのガーデン・パーティーだとか。
 そのパーティーもお友達で全て企画したものだからと、
 今朝も早くからお洒落して慌ただしくお出掛けになられました。
 パーティーの後は、たぶんお友達と一緒に2次会に行くだろう、とかで。
 もし終わるのが早ければ電車でお帰りになられる、そう言っておられましたが」

「早ければ、って・・・
 遅くなって電車が無くなったらその時はカオルちゃんどうするの?」

「その時は、お友達の亜佐美様のところにお泊まりになられる、と伺っております」

「ふ~ん・・ そうなんだ~」

「はい」

「じゃ、さっきのケーキは帰って来たらカオルちゃんに出してあげて。
 秋限定のケーキやスイートポテトとか、いろいろ入ってるからさ。
 そうだな、俺的にはね・・・
 栗の渋皮煮がのったモンブランがイチオシのお薦めだよ~ って言っといて。
 あ、もちろんゴンザさんの分もいつも通りあるから後で食べてよね」

「はい、いつも気を遣っていただいてありがとうございます、いただきます」

「そういえばゴンザさん、今年もカオルちゃんの誕生日、お祝いするんだよね?」

「お誕生会のことでございますか?」

「うん、そう」

「それは、もちろんでございます」

「ね、ゴンザさん、今年も俺、呼んでもらえるんだよね?」

「はい、鋼牙様はどう仰るかわかりませんが、カオル様は、零様にも来て欲しいと言っておられましたので」

「それなら、鋼牙はカオルちゃんの言うとおりのはずだろうから大丈夫だとして。
 え~と、カオルちゃんの誕生日ってたしか・・・13日だったっけ?」

「はい、もう10月になりましたので、あと10日ほどでございます」

「だよね」

「一応去年と同じようにお昼に、と考えております。
 ちなみにお料理のメニューなどは既に全て考えてあります」

「さっすがゴンザさん、抜かりはないね。
 よっしゃ、それじゃ俺もカオルちゃんにあげるプレゼントを準備しなくっちゃな~」

「それは、それは・・・ カオル様もお喜びになります」

「じゃ、お茶も飲み終わったし、早速で悪いんだけど、そろそろ俺の調べ物に付き合ってくれる?」

「はい、もちろんでございます」
 

さすが、冴島家の執事、鋼牙を育てあげただけの事はあるよな。
最近追っかけてるホラーの手掛かりを言っただけで、それらしい本をあれだけの蔵書の中から的確に選び出して持ってきてくれて。
おかげで奴さんの正体もわかったし、対処法も載ってたから今夜こそは・・・

『彼、さすがね。
 黄金騎士の、冴島家の執事だけのことはあるわ』

「そうだね。
 鋼牙がいないって聞いた時はあっちゃ~ と思ったけど、おかげで助かったよ。
 シルヴァ、正体もわかったことだし、今夜こそけりをつけるよ」

『ええ、もちろんよ、ゼロ。 しっかりね』

「オッケ~ まかせといて。
 そうだ、シルヴァ、ちょっとより道して帰るから」

『あら、どこへ行くのかしら?』

「ん~~ ちょっとね」

『しょうがないわね・・ まあ、だいたい想像はつくけど? 
 いいわ、あなたの好きになさい』

「サンキュ。 さて、それじゃ少しばかり急ぎますか」

右手のアクセルをさらに開け、スピードを上げると、東の管轄、ポートシティへとバイクを走らせた。



「え~と、聞いたのはたしかここら辺りだと思ったんだけどな・・・」

『ねぇ、ゼロ・・ カオルがいるからって、他人の結婚式のパーティーなんか覗いてどうするの?』

「ん~~ 特に深い理由はないんだけど・・・ あ、カオルちゃん、み~っけ! 
 うわ、カオルちゃんてば、ピンクの可愛いの、着てるじゃん。
 お~?! あの黄色のドレス着てるのが新婦さんかな? 
 すっげぇな~ あのドレス、全身にこれでもか、ってぐらい花が貼りつけてあるぜ」

『あなた、まさかとは思うけど、
 見ず知らずの花嫁を見るために、わざわざここまで来たわけじゃないわよね?』

「う~ん 俺はさ、カオルちゃんがお洒落して出掛けたって聞いたからちょっと?
 でもさ、予定外だけど、さすがにあの新婦さんのドレスは目につくでしょ~」

『本当にそれだけなのかしらね。 
 で、あなたの目には、あの子はどう映ったのかしら?
 ただ可愛かっただけ? それとも・・・
 あなたが心配したような顔をしていたかしら?』

「ふぅ~ まいったな、すべてお見通し? シルヴァに隠し事は出来ないな。
 そうだね、やっぱり見に来てよかった・・・ かな」

『たぶん言っても無駄でしょうけど・・・ ゼロ、お節介はほどほどにね』

「はいはい、わかってます。
 さ~てと、それじゃ少し早目だけど晩飯を食べて今晩に備えるとしますか」
 
『そうね、腹が減っては戦は出来ぬ、ですものね』

「そういうこと!」

バイクに戻りエンジンを掛けると、メニューが豊富で手っ取り早く食べれて、日暮れまで時間が潰せるファミレスへと、バイクを走らせ始めた。



「カオル~ ちょっと、大丈夫? やっぱり私ん家に泊まった方がよくない?」

「ううん、だ~いじょうぶだよ、亜佐美~」

「んもう! カオル~ あんた、自分が思ってるよりもけっこう酔ってるよ?」

「へ~きへ~き、全然平気~ 
 電車にさえ乗っちゃえば、後は着くまで乗ってるだけなんだもん。
 それにね、亜・佐・美、わたしにはねぇぇ~
 ゴンザさんも、ザルバちゃんも、それとねぇ~~ 
 むふふふふ・・ 鋼牙だっているんだからね、大・丈・ブイ・!」

「はいはい、わかった、わかりましたよ。
 でもね、私はここまで、電車に乗るところまでしか送ってあげられないんだからね。
 い~い、とにかく来た電車に乗ったら、ゴンザさんだっけ? 
 迎えの時間をちゃんとメールするのよ~  カオル、わかった?」

「は~い! わっかりました~」

「もう~ 大丈夫かなぁ~
 あ、電車が来た。
 ほら、カオル、来たわよ、この電車に乗って!

 カオル、い~い? すぐメールしなさいよ~」

「わかってる~ 亜佐美、ありがと、バイバ~イ! またね~~」

ガァ~~~ プシュー 

「ん~ カオル、大丈夫かな~・・・」


「よっこいしょ はぁ~ 疲れたぁ~ 
 
 あ・・・ メール、送らなきゃ」
 
え~と、これを・・・ 
ふわぁ~~ ねむ・・・ ん~~~ で、よぉぉ~し、送信! っと。
亜佐美ってば心配ばかりしてたけど、もう迎えのメールも送ったし。
えっと・・・ 到着前にアラームもセットしたからもう大丈夫、っと。
ふぅ・・ 綺麗だったな~ 教会の式。
それにしても、これ・・・



・・・ん?  携帯か?

『どうした? 鋼牙』

帰宅の途中、屋敷の前の上り坂を歩いていると、微かにバイブレーターが振動したような気がして、歩いていたのを立ち止まり、携帯を取り出して見てみる。

「・・・・・・」

『なんだ? まさかカオルからメールだって言うんじゃあないだろうな?』

「その、まさかだ」

『おいおい、勘弁してくれよ~
 たまたま帰りがけだったからよかったが、ホラーと出食わしてる最中にでも・』

「・・・間違いだ」

『間違い? 今カオルからだとお前・』

「たしかにカオルからだが・・・ 送った相手を間違ってるようだ」

『はぁ?』

「夜、俺には連絡するな、とカオルには言ってある。
 今日は結婚式のあと飲みに行くようなことを言っていたようだから、
 どうやら酔って間違えて、迎えのメールを俺に送ったみたいだ」

『なるほど・・・ で? どうするんだ? ゴンザに迎えに行かせるのか?』

「いや、俺も今夜はもう終わりだし、メールを送り間違えたところからして・・・」

『カオルのやつ、間違いなくかなり酔ってるな』

「ああ。
 だから、ゴンザより俺が行った方がいいだろう」

『そうだな。
 駅から家の間に寝てしまったらゴンザにはどうにもできないからな~
 鋼牙、カオルからの指令書を受け取った以上はもう一仕事だな』

「ああ」

そのまま屋敷に帰ると、メールの話をしてゴンザには先に休むよう言い渡す。
ザルバも箱の中にしまい車のカギを持つと、車庫に行き車を出す。


駅のロータリーに車をつけ待っていると、しばらくして電車がホームに入って来るのが見えた。
とたんに、閑散としていた駅の中から、家路を急ぐ人の波が溢れ出てくる。
ほとんどの人が通り過ぎ、出てくる人数も少なくなってくるのを見ていると、まさか寝て乗り過ごしたのか、と心配になってくる。
携帯を掛けた方がいいんだろうか、と、乗り過ごした時の事を考え始めた頃、ようやく少し頼りない足取りでカオルが出てくるのを見つける。
そのまま運転席に座ってミラーで見ていると、少しキョロキョロしていたが、ようやく車を見つけたんだろう、ホッとした顔をしてこちらの方に向かって歩き始める。
ドアを開け、後ろ座席に乗り込んでくると、迎えに来たのがゴンザだと思っているからだろうが、俺だと気づかず酔いが回っているのも手伝って、普段俺の前では決して言わないような事をいきなり口にし始める。

「ただいま~ すいません、遅くに迎えに来てもらって。
 あのね、今日の結婚式、ステキだったんですよ~  
 みんなで準備したパーティーもうまくいってね~
 花嫁さんの着ていた白のウエディングドレスがほんっときれいで・・・
 ふぅ・・・ いいなぁ~ 家族や友達、みんなに祝福されての結婚式。
 二人ともうれしそうで、幸せそうで・・・ ほんと、羨ましいなぁ~」

カオルの話すのを聞いていると、なんとなく声を掛けそびれてしまい、ミラーに映るカオルを時々目だけで追いながら、そのままゆっくりと車を発進させる。
シートに深く凭れて、昼間の事でも思い出しているんだろうか・・・
窓に向かって横に向けられた顔は、一見外を眺めているようなのに、それでいてどこを見ているのか定かでないような、そんな感じでぼんやりとしている。

「・・・鋼・・牙・・・」

しばらく無言で外を見つめていたカオルの口から、ぽつん、とひとこと、ふと零れた俺の名前。
なぜ俺の名を呟いたのか、その訳を訊きたいのに訊けないまま車を走らせていると、車に揺られているうちに寝てしまったのか、背後からカオルの静かな寝息が聞こえ始めた。

カオル・・・ 



「おはようございます、ゴンザさん」

「これはカオル様、おはようございます。
 最近お忙しくて、ずいぶんお疲れのようでしたが、ご気分はいかがですか?」

「こんな時間までぐっすり寝たし、もう大丈夫です。
 あの、昨日は車の中からずっと寝たままだったみたいなんでシャワーしてきますね」

「では、私はお食事の用意をしておきます」

「あ、でも、もうすぐお昼だし、鋼牙が帰ってからお昼を一緒でいいですよ?」

「いえ、それが鋼牙様のお帰りは、たぶん夕方遅くになるだろう、とのことでして」

「そっか・・・ じゃ、お願いします」

「はい、畏まりました」


シャワーを済ませキッチンに行くと、ゴンザさんがすぐ食べれるように用意してくれていて、朝食というにはかなり遅くて、昼食というには少し早いお昼を食べる。

「ゴンザさん・・・」

「はい、なんでございましょう」

「昨日、わたし車の中でもう寝ていたんですよね?」

「・・・そうでございますね」

「でも、自分の部屋のベッドで寝ていたってことは、わたしを運んだのってやっぱり」

「はい、鋼牙様でございます」

「そうですよね~ 
 いくらゴンザさんが万能でも寝ているわたしを抱えて2階までなんて・・・」

「ははは・・・ それよりもカオル様、あのブーケは、頂いたのですか?」

「あ~ あれはね~ おかしな話なんですけど・・・
 ブーケ・トスの時、人垣の一番後ろで友達と話しながらただ立ってたんです。
 そうしたらいきなり前にいる人達を飛び越えてポ~ンと目の前に飛んで来ちゃって」

「ほう~」

「で、反射的に手を出したらゲットしちゃったっていう」

「なるほど、幸運がカオル様のところに飛んで来た、というわけですね。
 ブーケを受け取った人は次に結婚できる、と言われているそうですから・」

「でも、わたしには当分関係ない話みたいだし・・・」

「そうなのですか?」

「たぶん・・・
 たしかに鋼牙といつか結婚できたらいいな~ ってわたしは思ってはいるけど。
 でも、こればっかりはね」

「カオル様・・・」

「最近結婚式の準備ばかりしていたんで、お昼からは久しぶりに仕事をします。 
 ゴンザさん、ごちそうさま」

急ぎの仕事はなかったものの、ここ1週間ほどは友人たちと結婚式の準備でバタバタしていて何もしていなかったし、今日は鋼牙も夕方までいない。
久しぶりにキャンバスに向かうと、時間の経つのも忘れて無心に絵を描き続けた。



「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ただいま。 カオルは? 今日は家に居るのか?」

「はい、お部屋の方で絵をお描きになっておられます」

「そうか・・・ リビングにいるから、あとで何か飲むものを頼む」

「はい、畏まりました」

コートを渡した後、ソファーに座って寛いでいると、ゴンザがお茶のセットを用意し持ってきて淹れてくれる。
カップを受け取り飲んでいると、静かにゴンザが俺に話しかけてくる。

「鋼牙様、あの花が何か、おわかりになりますか?」

「・・・花?」

ゴンザの目線の先を辿っていくと、テーブルの端に・・・

「花・・束?」

「いいえ、これは昨日カオル様が行ってらした結婚式で受け取った花嫁のブーケでございます」

「ブーケ? それは花嫁が持つものじゃないのか?
 そんな物をなんでカオルが受け取ったりするんだ?」

「鋼牙様、詳しいことはぜひ、カオル様から直接お話をお聞きになってください。
 それより、カオル様のお誕生日がもうすぐでございます。
 今年も昨年同様、お昼にお誕生会をしようと思うのですが・・・」

「ああ、頼む、そうしてくれ」

「はい」

『おい、零のやつが、俺も行く~ って絶対言ってくるぞ~』

「ははは・・ それでしたら先日調べ物をしに来られた時に、もう言われました」

『やっぱりな』

「ふっ・・ 来たいというのなら零も呼んでやればいい。
 カオルも喜ぶだろう」

「では零様にはそのように伝えておきます。
 鋼牙様、昨年同様カオル様へのプレゼントをお忘れないようお願いいたします」

「ああ、わかった」

零はカオルの喜びそうなプレゼントを用意するだろうが、俺はいったい何を用意すればいいものか。
カオルの喜ぶ顔は見たいが・・・

『おい、鋼牙~ お前なにを急に眉間に皺を寄せ始めてるんだ?
 ま・さ・か、カオルへ渡すプレゼントを考えていたとか?』

「・・・・・・」

『さては、図星か~?』

「うるさい!」

飲み終わったカップをテーブルに置くと、ソファーに凭れ目を閉じて、何かカオルの喜びそうなものはないかと考え始める。

そうだ、去年と同じだが、とりあえず今夜何も無ければ、カオルにそれとなく何か欲しいものがないのかと訊いてみてもいいかもしれない。
だがその前に、ゴンザが言っていたあの花束、ブーケについても、詳しく訊いてみなければ。


晩飯の用意ができたから呼びに行くというゴンザを止めて、代わってカオルの部屋へ行く。

コンコン・・・

「カオル、俺だ、入るぞ」

ドアを開け中に一歩踏み入れると、キャンバスに向かっていたカオルが身体をこちらに向け驚いた顔をしている。

「どうした?」

「え? だって鋼牙、今日は帰りが夕方遅くになるって聞いてたから・・・」

「仕事が意外に早く片付いたから、昼のお茶の頃にはもう帰っていたんだが、
 カオルは絵を描いている、とゴンザに聞いて下で少しのんびりしていた。
 カオルも夢中で描いていたから帰ったことに気がつかなかったんだろう?」

「うん、そうだけど・・・ でも、声ぐらい掛けてくれてもよかったのに・・・」

カオル、お前、なんて顔してるんだ。

「昼飯を食べる暇が無かったから、俺は腹が減ってる。
 カオル、少し早いが用意もできたようだし、晩飯を食べないか?」

「あ、うん、食べる食べる。
 ね、鋼牙、ちょっとだけ待って、一緒に下りるから・・・ うわっ あ、あれ? ん、もう~~」

「ふっ・・ 慌てるな」

「うん」

戸口に凭れカオルが片付けるのを待って、手を差し伸べてやると、微笑みながら出しかけた手を途中で止めて引っ込めてしまう。

「カオル?」

「だって、手に絵具がついてるから鋼牙が汚れちゃう・・・ あ・・」

「下りるぞ」

「鋼牙・・」

引っ込みかけた手を掴んで引き寄せ、そのまま繋いでゴンザの待つダイニングに向かう。

俺は立て続けの仕事、カオルは仕事と友達の結婚式の準備。
この十日ほど、カオルと俺はほとんどすれ違いの生活が続いていた。
だから・・・
下までのほんの少しの間でも、手を繋ぐ、というほんのささやかなことなのに、繋ぎ握り締めた手から伝わってくるカオルの温かさに俺は・・・


昨日の結婚式の準備からパーティーまでの話を聞きながら晩飯を食べ、食後はリビングでカオルと二人久しぶりにコーヒーを飲みながらゆっくりとした時間を過ごす。

「うふふ・・・」

「なんだ、どうした?」

「え、なんだか鋼牙とこうやってのんびりするの、久しぶりだな~ って思ってね」

「・・・そうだな・・・カオル、あれは・・」

「え? あれって、なんのこと?」

「そこに飾ってある花、ゴンザはブーケだと言っていたが・・・
 たしか、間違っていなければ、ブーケというのは花嫁が持つ物のはずだろう。
 ゴンザはそれをカオルが昨日、受け取った、と言っていたが・・・」

「ブーケ・トスだよ、鋼牙」

「ブーケ・トス?」

「そう、式が終わった後にね、欲しいと思っている未婚の女の人達に向かってね、
 投げる? ううん違う、放るかな? 後ろ向きにね、こうやって・・・」

椅子から立ち上がり、少し離れたところでこちらに背中を向けて立ち、どうやるのかを、かっこうを真似してやって見せる。

「ブーケをね、ポ~ンって放り投げるの」

「未婚の女達がそのブーケを欲しがるのには何か理由があるのか?」

ゆっくりと戻ってきて隣に座ると、穏やかな笑みを浮かべ飾ってあるブーケを見ながら話し始める。

「それはね・・・ 幸せのおすそ分け、っていうのかな・・・
 投げられたブーケを受け取った人は次に結婚できるって言われているからなの」

「・・・・・・」

「あ、鋼牙、わたしは別にそんなつもりで持って帰ったわけじゃないからね。
 気にしなくていいからね」

「・・・・・・」

「わたしはね、最初、そんな争奪戦に加わる気なんてなかったの。
 人垣から少し離れた後ろ~の方で友達と二人並んで立ってて、 
『誰が取るんだろうね~』 なんて言いながら笑って見てたんだもの。
 それなのに、力いっぱい放り上げられたあのブーケがね、
 取るぞ~ って意気込んでる人達の群れを飛び越えて目の前に飛んできちゃって。
 気がついたら、反射的に前に出した手の中にブーケがあった、っていう?
 欲しい人はいっぱいいたのにね、もう~ 笑えるでしょ?」

「・・・カオル」

「そういうものだから他の人にあげちゃうわけにもいかないでしょ?
 だから、持って帰ってそこに飾ってあるの。
 ただの偶然だからね、鋼牙」

「ああ、わかった。
 カオル・・・ 今夜、俺の部屋に来ないか?」

「ん、行きたい。
 でも鋼牙、今夜はわたし、話して・・・あの、傍にいるしかできないよ?
 それでもいいの?」

「ああ」

「ありがと、鋼牙」


風呂から上がると、ゴンザが用意してくれたトレイを持って部屋に向かう。
ドアを開け中に入ると、先に上がっていたカオルがいつものようにソファーでスケッチブックを開いて何か描いている。

「あ、鋼牙・・」

俺を笑顔で迎えながら描いていたスケッチブックを閉じようとするカオルの隣に座り、トレイをテーブルに置く。

「待たせたな、カオル。
 それは何を描いていたんだ?」

「これ? え~っとね、さっき言った昨日のブーケが空を飛んでいるところ、かな。
 鋼牙、見てみる?」

「いいのか?」

「うん、いいよ、はい」

開いて渡されたスケッチブックには・・・ カオルが見上げた空間なんだろう。
尖塔の先らしいクロスのマークが見える教会の建物の上部が、スケッチブックの下側部分に少しだけ描かれていて、上の方にはリビングで見たあの花嫁が放ったというブーケが、カオルに向かって飛んでいるところが、差し出された手の先と一緒に描かれていた。

「たしかに・・・ ブーケが飛んで来ているな」

「ふふ・・ そう言ったでしょ?」

「ということは、これは、カオルの手なんだな」

「そうだよ」

「そうか・・・」

カオルの目にはこんなふうに映ったのか・・・
日の光を浴びて宙を舞い、まばゆいばかりの輝きを放っているブーケ。
鉛筆だけの素描画だが、描かれた絵にはカオルの目から見た実際の情景とカオルのブーケへのイメージが見事に描きこまれている。

「ありがとう、カオル」

「いいえ、どういたしまして」

スケッチブックを返し、ハーブティーを飲みながらすれ違っていた間の出来事を、時間を埋めるようにゆっくりと語り合う。
いつものように、ほとんどカオルが話し、俺はカオルの話を聞きながら相槌を打って、時折求められた時には返事を返す。
そんな何気ない、だが心休まる静かな時間。
そういえば、二人とも何も用事の無い夜に、こうして二人一緒に話し過ごすようになって、もうかれこれ一年以上経つ。
仕事柄ふだん気を張り詰め続けている俺にとって、カオルとこんなふうに過ごす時間のおかげで、俺がどんなに心休まり癒されているか・・・ 
カオル、たぶんお前は気付いていないだろうな。

「鋼牙、わたしの顔、何か変? そんな顔してどうしたの?」

「いや・・ なんでもない。
 それよりカオル、もうすぐお前の誕生日だろう。
 去年の繰り返しのようで悪いが、何か欲しいものはないか?
 ゴンザが誕生会をすると言っていたし、何かお前に、と思って考えてみたが、
 零と違ってどうも俺はこういうことが苦手でな」

「ん~ なら、鋼牙でいいよ?」

「・・・は?」

「ううん、冗談だよ。
 誕生日プレゼントだよね? う~ん そうだな~ 
 鋼牙がくれるならなんでもうれしいけど、でも、今のところは特に無いかも」

「本当に何も無いのか?」

「う~ん・・・ あ、だったら鋼牙、今年も絵のモデルやってくれる?」

「絵のモデルか、やってもいいが・・・ 全裸はもうごめんだからな」

「え~ なんで? 鋼牙の身体、すごく綺麗なのに。
 ざんね~ん、先に言っておけばよかった」

「カオル・・・」

「鋼牙、じゃあ今年も花束をリクエストしてもいい?
 去年もらったあのバラの花束、すご~くうれしかったんだよね。
 ね、いいでしょ?」

「・・・ああ」


日付の代わる頃まで話をして、今夜は久しぶりに二人同じベッドで、寄り添いお互いの温かさを感じながら眠りに就く。

疲れているのか、俺の腕を枕に目を閉じるとすぐに静かな寝息を立て始めたカオルの寝顔を見ていると、なぜか今夜は少し胸がざわつく。

カオルは本当に今欲しい物は何も無いんだろうか?
誕生日のプレゼント、さっきカオルが言ったように、ただバラの花束を渡すだけでいいんだろうか? 
それとも・・・

「こ・・・が・・・」

夢の中で俺の名を呟くカオルの額にキスを落とし、答えの出ないままやがて俺も静かに目を閉じた。



コメント
最近、ぜんっぜん思ったように時間が取れませ~ん。
おかげで、カキコも予定通り進まずこのアリサマ・・・
う~ん、う~ん・・・ あと一週間で10月が終わってしまいます。
ブーケ・トスはですね、この前ちょちょっと言った通り、この後のためのちょっとした布石なんですけどね。
今週末ももうひと踏ん張り、次の段階の農作業が残ってますので、まあ気長に、いろいろ想像しながら待っててくださいませ。
それでは。 (*^_^*)

【2012/10/24 12:05】 | なな #- | [edit]
こんばんは、心太様。
最近送っていただいたコメントを読んでいて思うのは、心太様と萌えのツボのポイントががすごくあっているなぁ~ということ。
今回のおはなしもまた然り。
いやぁ~ なぜにこんなにピントが合っているのか・・・
無理だとはわかっていても、お近くならお茶でもしながらゆっくり語り合いたいな~ なんて思う今日この頃です。

メール、おはなしに限らず、パカッと消えるのはひどく堪えます。
完全に書き上がったモノを全消ししたのだけでも3回ほどありますが、頭真っ白になって脱力しますからね・・・
あれはほんと、つらい。 (ToT)  お察しします。

【2012/10/14 22:17】 | なな #- | [edit]
こちらこそ、いつもありがとうございます。
本当ならこのおはなしの続きを土曜中に、と最初は思ってたんですけど、なかなかそう上手くはいかず・・・
お言葉通り、リフレッシュして頑張ります。

え~と、映画情報ですが、パソコン無くて携帯で見ていて助かる、というメールやコメントを何度か頂いたことがあるので、なるべく載せるようにはしているんですが、お役に立てて何よりです。
ちなみに、20日(土)から特典付き前売り鑑賞券が発売されるんですが、特典第一弾は、黒白2色のオリジナルICカードケースでして、1枚につきどちらか1枚をもらうことができるそうです。
お近くで特典月の鑑賞券を販売する映画館があるんだったら買いに行くのもいいと思いますよ。
ちなみに管理人は、車で20分ぐらいのところに該当の映画館があるんですが、あいにく20日は朝から1日中用事で、買いに行けない、といいますか、たぶん夕方行った頃には売り切れていることでしょう。
あ~あ、愛しのザルバ君、欲しかったのにな・・・
 


【2012/10/14 21:11】 | なな #- | [edit]
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