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KOUGA worries about KAORU

category: 作文1  

画家として急に慌ただしくなったカオル。
 自然と鋼牙と一緒にいる時間が短くなり、
 いろんな雑誌のコラムや出資者の出現で、
 自分の描きたくないものまで要求されるようになる。
 仕事だから仕方ないと割り切って最初はこなしていたカオルが、
 徐々に耐えきれなくなっていき・・・。
 (鋼牙ともなかなか会えなくなって)
 プロの画家としてのプライドと女性としてのカオル自身とのせめぎ合いが見てみたいです!
 そういった場面での鋼牙の立ち位置というか、彼だったらどうするか・・
 という辺りは、お任せでw


これ、今回のお題です。
実はこのお題、6月末頃、カキコの合間に、何気な~くカテゴリのところを眺めていたんですが・・
作文2の数が、作文1の半分を越えちゃったなぁ~~ とか思いつつ、こんなに数を書いたっけ? と、足し算をしてみたところ・・  作文1(62) + 作文2(33) + 作文3(4) = 99
ありゃ? 次のが100個目? \(◎o◎)/!
う~ん・・ これは気付いたからには何かした方がいいのか~? なんて、いろいろ考えて、このサイトを始めるきっかけになった、ガロ友で親友の仲良し大好き 「gold gerden」 管理人の一二三様に、 「100個記念のお題を、できれば何か、せつない系みたいな感じので~!」 と、すごく忙しい毎日を過ごしているのに無理矢理お願いして、考えてもらいました。 
いつもいつも、どうもありがとうです、一二三様。
本当はこれ、100個目でUPしたかったんですが、連作含めていろいろ書いていたりで、こんなにのびのびになってしまいました。
それにしても・・ すっかすかのスポンジ脳の管理人にはかなり難易度の高いお題です。
力不足は十分承知の上ですが、いつも遊びに来てくださってる皆様方と、サイト立ち上げのきっかけをくれて、いまだに後押しや励ましをしてくれる一二三様に、今までなんとか頑張ってこれた感謝の意を込めて、たくさんのありがとう、と、この作文を・・・ ぷり~ず。 (*^_^*) 





 
   ・・・ KOUGA worries about KAORU ・・・
                                     <9.19.2012>


「ゴンザ、カオルは最近忙しいのか?」

食後のコーヒーを飲みながら、ここ何日か顔を合わせていないカオルの事をゴンザにそれとなく訊いてみる。

「はい、詳しくは聞いておりませんがそのようでございます。
 お食事の時間もなかなか取れないようで、
 お昼などはお部屋の方でお食べになることが ほとんどでございます」

「そうか・・・」

「鋼牙様はカオル様から何かお聞きになっていらっしゃらないのでしょうか?」

「ああ」

『なにしろ鋼牙もここのところ、いろいろと立て込んでいるからな~』

「そうでございますか・・・」

『おい鋼牙、カオルの心配もいいが、そろそろ出かけないとまずいんじゃ~ないのか?』

「ああ、わかってる。
 ゴンザ、今日も帰りはたぶん夕方・・・ 
 いや、もしかしたら今夜はそのまま帰らないかもしれない。
 すまないがカオルの事、気をつけてやってくれ、頼む」

「はい、畏まりました」

カオルの事は気にはなっていた。
が、急を要すことばかりが立て込み、自分の時間をとることなど許してはくれない。
俺はコートを着てゴンザに送りだされると、潔く頭を切り替え、いつものように屋敷から続く道を下っていった。



「はぁ~ぁ~~」

疲れちゃったな・・・ なんだかもう、ぜ~んぜんやる気が起きないよ・・・

「絵を描く」 ということは、わたしにとっては 「生きている」 というのと同じこと。
大好きな鋼牙とどっちかを選べ、と言われても選ぶことが出来ないほど大事なことだ。
いつもなら、一旦描き始めると、ご飯を食べるどころか、空腹な事にさえ気付かずに朝から晩までず~っと描き続けてしまうことだってしょっちゅうで、当たり前のはずなのに・・・
しなくちゃいけないことは山積みだっていうのに、キャンバスを前にしても全然やる気がわかなくて、朝ごはんを食べた後、部屋に上がってまだ1時間かそこらだっていうのに、早々にダイニングに下りてきて、ゴンザさんに淹れてもらったお茶を飲んでいるだなんて・・・

「カオル様、どうかなさいましたか? 
 顔色があまりいいとは言えないご様子。
 もし何か私でもお力になれることがありましたら、どうぞ遠慮なく仰ってください」

ゴンザさんが、紅茶のお茶受けにとお菓子を出してくれながら、さりげなく、それでも心配そうに訊いてくる。

「ゴンザさん、わたし・・・
 実はあんまり、大丈夫じゃ、ないかも・・・ です」

「どうされたのですか? 
 私が思うに、お仕事の事のようですが、忙し過ぎるのでしょうか? 
 それとも・・ まさかとは思いますが、スランプ、でございますか?」

「う~ん・・ スランプって言えばスランプだし、違うって言えば違うのかな~?」

「はて、それはどういう意味でございましょう?」

「う~ん・・・ どう言えばいいのかな・・・
 わたしって、普通のOLさんみたいにお勤めしているわけじゃないから、
 仕事を受ける時って、自分でするかどうかを決めるじゃないですか。
 これは自分に出来る仕事、やりたい仕事なのか、とか、
 この納期なら何かあったとしてもちゃんとできるかな、とか、
 いろいろ考えて、それで引き受けるわけなんですけど・・・
 だから本当は自分のしたい仕事を選んで、しかも普段の生活に無理がこないように、
 納期にもある程度ゆとりを持って、受けて、それでやってたはずだったんです。
 それが気がついたら、自分じゃあまり受けたくないような仕事を、
 無理矢理こなさなくちゃいけないようなことになっちゃってて・・・」

「それはもしかして、世間一般で言うところの、世の中のしがらみ・・ 
 もしくはそれに似た類のこと、のせいなのでございますか?」

「え、ゴンザさん、なんで? なんでわかったんですか?
 まさに、そのとおりって言うか・・・
 ほんとは、引き受けたくなんて、なかったんですけど。
 ねえ、ゴンザさん、聞いた後は忘れてくれていいから、
 わたしのはなし、少しだけ聞いてもらってもいいですか?」

「はい、私でよろしければ、どんなことでもお聞きいたしますよ」

それからわたしは、向かいの椅子に座ったゴンザさんに、胸の中に蟠(わだかま)って溜まっていたことを、ぽつぽつと・・・話し始めた。

「最初、友達の亜佐美に 『ねえカオル、描いてくれない?』 って、そう頼まれて。
 亜佐美が関係している月間雑誌のコラムの挿絵を、描き始めたんです。
 亜佐美は仲のいい友達だし、売れなかった頃にほんとによく助けてもらったから。
 だから、断わらずに仕事を引き受けたんですけど、その時の仕事が予想以上に好評で。
 そうしたら、亜佐美を通して次から次へと挿絵の仕事が舞い込んで来るようになって・・・」

「カオル様のお仕事が人気が良かったというのは、喜ばしいことですね」

「うん、そうなんですよね。
 たしかに好評だったことは素直に嬉しいし、
 おかげでふだん絵に興味が無い人たちにも名前を覚えてもらえて、
 わたしの知名度が上がるっていうことは、画家としてはいいことなんです。
 でも、わたし、挿絵専門でやっていくつもりはないし、
 できるならきちんとした絵を描くためにも、その後の仕事は断わりたかったんです。
 ただね、亜佐美の顔を潰すことになることを考えると、なかなか断わることもできなくて。
 それでもどうにかこうにか、時間をやりくりして頑張ってやっていたんだけど・・」

「まだ他にも何かあったのですか?」

「・・・あのね、ゴンザさん、絵の個展を開くのって、すごくお金がかかるんです。
 それで、スポンサーっていうのかな~?
 お世話になってる画廊のオーナーさんが紹介してくれた人で、
 わたしの絵をすごく気に入ってくれてる人がいるんですけど、
 その人が経営しているお店に飾る絵を、急に何枚か描くことになっちゃって・・・」

「・・・・・」

「ふと気が付いたら、自分が本当にしたいことがまるでできなくなってて、
 ただ締め切りに追われて義務感だけで絵を描いてる自分がいて。
 でも、今さら断わることも出来ないし。
 そんなこと考えながら描いてたら、なんだかすごくやるせなくなっちゃって」

「カオル様、そのことを鋼牙様には御相談されたのですか?」

「ううん、してません。
 だって最近の鋼牙って、すごく忙しそうで話しする暇なんて全然無いし。
 それに、もし鋼牙に相談したとしても、たぶんこう言われるに決まってます。
『描きたくないモノを描いてどうする、嫌なら嫌と断わればいいだろう』 って・・・」

「それは・・・ 
 でも、言ってみなければわかりませんよ?」

「ふふ・・・ ありがとう。 
 でも、ゴンザさんだって、鋼牙がそう言うの、想像できるでしょ?
 鋼牙は、確固たる自分の信念を持って生きてる強くて真直ぐな人だから、
 だから、厳しいようだけどいつもストレートに正しい事を言ってくれるし、
 わたしの立場だったとしても、受けたりなんかしなかったと思うんです。
 でも、わたしは・・・
 受けたくない! やりたくない! 描きたくない!
 いくらそう心の中で強く思ってても、はっきりと断われませんでした。
 
 ゴンザさん、わたし・・・
 以前に比べたら少しは本業の方の仕事の依頼もくるようにはなったけど。
 でもね、まだ世間に認知されるほど有名になったわけでもないから、
 亜佐美や、その知り合いの人が廻してくれる仕事を断わるわけにもいかないし、
 これからのこと考えたら、スポンサーの人の機嫌を損ねることもできない。
 だから、たとえ嫌でも、描きたくないものでも、今は、受けて・・ 
 それで受けた以上はやるしかないんです」

「しかし、それは・・」

「こんな愚痴みたいなこと、いまさら言ってもどうにもならないし、
 今はもう、ただやるしかないんです。
 ごめんなさい、ゴンザさん。
 でも、聞いてくれてありがとう。
 わたし、絶対最後まで頑張ります。
 お茶、ごちそうさまでした」

「カオル様・・」

やるせない気分に落ち込んでいたわたしは、ゴンザさんに話し掛けられ顔を見ているうちに、胸の中に溜まっていたことを話してしまう。
またゴンザさんに要らぬ心配をさせてしまった。
そう思ったら、なんだかすごくうしろめたくて、ゴンザさんが心配そうにまだ何か言いたげなのはわかっていたけど、わたしは話をそこで切り上げ、顔をあまり見ないようにして自分の部屋に戻ることにした。



『ふうぅぅ・・・ やっと帰ってこれたか。
 まる1日以上もずっと働き詰めとは、お前さんもだろうが、俺様もかなり疲れた。
 おい鋼牙、昼飯を食べたら夕方まで少し寝ておけよ』

「ああ、言われなくてもわかってる。
 ザルバ、お前もな」

『それこそ、言われなくても休むってもんさ』

ドアを開け中へ入ると、ゴンザが二階へ続く階段の手すりを磨いていた。

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ああ、ただいま。
 ・・・カオルは? 絵を描いているのか?」

「はい、そのようでございます・・・」

「ゴンザ? どうした、カオルに何かあったのか?」

「それが・・・ いえ、やはり私の口から詳しいことは・・・
 鋼牙様、お忙しいとは思いますが、どうかカオル様のこと、気をつけてあげて下さいませ。
 よろしくお願いいたします」

「・・・?・・・・  わかった」

ゴンザにコートを預け、ザルバを箱の中にしまうと、シャワーを浴びて着替え、後はソファーに座って休んでいたが、どうにもさっきのゴンザの言葉が妙に気に掛かる。
俺よりもカオルと一緒にいる時間が長い分、というよりも、たぶんあのゴンザだからカオルもいろいろと話しやすいんだろうが、俺にも言わないような普段の事や、ちょっとした悩みのようなこともカオルから相談されて聞いているらしい。
が、だからといって、ゴンザがカオルから聞いたことをそのまま俺に話すことはまず無いし、俺の方から無理に聞きだすこともない。
俺は、カオルが俺に言いたいことがあれば、必ず言ってくると思っているし、たとえ言いにくいことがあったり、俺が気がつかないことがあったとしても、ゴンザがいる限り、詳しく話さないとしても、さっきのように俺になにがしかの示唆をしてくれる、そう信じている。
だからこそ・・・
さっきの、帰った時のゴンザのあの言葉が気に掛かる。

カオル・・・ 
最近たしかに仕事を忙しそうにしているようだが、それは絵を描き始めるといつものことだから、と、俺はあまり気にしていなかったんだが、今回は違ったのか・・・

そんなことを考えていると、昼食の準備ができたのか、ゴンザがカオルを呼びに行こうと横を通りかかる。

「・・・ゴンザ」

「あ、鋼牙様、もう少しお待ちください。
 今、カオル様を呼びに行ってまいりますので」

「いや、それなら俺が行こう・・ お前は準備して待っていてくれ」

「そうでございますか? では、よろしくお願いいたします」


カオルの部屋に行き、ドアをノックしながら声を掛ける。

「カオル・・  カオル、俺だ・・・ 入るぞ」

ドアを開けると、キャンバスの前に置いた椅子に座り、下絵を描いている。

「カオル、ゴンザが昼飯ができたと・」

「ごめん、わたし今食べたくない、っていうか、今日のお昼、要らないから」

「・・・カオル?」

「ごめん、今すごくノッてるところだから放っといて、このまま描いていたいの」

「・・・そうか、わかった」

一度も振り返りもせず手を動かし続けるカオルの姿にそれ以上言うこともできず、静かにドアを閉め、部屋を後にする。

カオル・・・  絵に没頭するのはいつものことだが、今日のお前は・・・


昼飯を食べ、その後書斎で仕事を始めた俺にゴンザが昼のお茶を持ってくる。

「鋼牙様、どうぞ」

「ああ」

「それでは、失礼いたし・」

「ゴンザ」

「はい、なんでございましょう?」

「カオルには? もう・」

「カオル様には鋼牙さまの後に持って行くつもりでしたので、まだでございます。
 ・・・あの、よろしければ鋼牙様が、持っていかれますか?」

「俺が持って行くと、カオルは・・・ 嫌がるかもしれない」

「いいえ、けっしてそのようなことはございませんよ」

「そうだろうか・・・」

「はい。 
 では鋼牙様が飲み終えられる頃に用意をし・」

「ゴンザ、悪いがカオルと一緒に飲む。
 カオルの分をすぐに用意してくれないか?」

「畏まりました。
 ではすぐにお持ちしますので、このままお待ちください」

「すまない、頼む」

笑顔で答えたゴンザは足早にキッチンに戻って行き、すぐにカオルに用意したものを持って戻ってきた。
そして俺は、ゴンザが用意してくれたトレイを持ってカオルの部屋に行く。

コンコン・・・
ノックをしたが、思っていた通り昼と同じで、やはり返事は無い。
しかたがないので無言のまま中に入ると、昼の時と同じ、カオルはドアに背を向けてキャンバスに向かって下絵を描いていた。

「・・・・・・」

何も言わず、黙ったままポットに入った紅茶と砂糖、温めたミルクをカップに注ぎ入れ、出来あがったミルクティーのカップを持って、そのままカオルに近づいていく。
椅子に座って一心にキャンバスに向かっているカオルの前に、無言でカップを差し出す。

「え?」

差し出されたカップを見、そのまま持った手を辿って視線を上げ、俺の顔を見上げる驚いたカオルの少し開いた口に、もう一方の手で持っていたゴンザが焼いたクッキーを無理矢理一枚押し込む。

「ん~ ふおうが?」

「お前の好きなゴンザのクッキーだ、いいから食べろ」

「・・む・・んん・・・ ちょ、どうして? なんで鋼牙がここに?」

「俺が来るとおかしいか?
 この後、夜はわからないが夕方までは家に居るんでな。
 最近カオルと話をするどころか、顔を会わせる暇すらも無かったから。
 だから、家にいてどうせお茶を飲むなら、一人より一緒がいいかと思っただけだ。
 それにカオル、忙しそうだから、呼んだとしても下りては来ないだろう?
 だから・」

「それは鋼牙だって! ねえ、鋼牙もすごく忙しいんじゃないの? 
 昨日の夜だって帰れなかったでしょ? 全然寝てないんでしょう?」

「俺の事はいい、慣れてるし大丈夫だから心配するな。
 カオル、いくら忙しくてもお茶を飲むぐらいつきあってくれ。
 ほら・・」

俺からカップを受け取りながらまだ何か言いかけたカオルの口に、もうひとつクッキーを押し込むと、俺はソファーに座って自分のお茶を飲み始める。
カオルはこっちを向いてはいるが、まだ椅子に座った、そのままで・・・

「カオル、俺と一緒にお茶を飲むのは、嫌か? 嫌でないなら、隣に来ないか?」

「・・・鋼牙」

やっと椅子から立ち上がりソファーへ、俺の隣にやって来る。

「早く飲め、せっかく淹れたのに冷めてしまう。
 それと・・ カオル、昼飯を食べてないんだから、クッキー、もっと食べろ」

「・・・うん」

やっと一口、また一口と飲み始めるカオル。

「ふぅ・・・ 美味しい」

顔の前、両手で持ったカップ、その中のミルクティーが揺れるのを見つめながら口元に浮かぶ笑みに、俺も少しホッとする。

「ほら、食べろ」

皿の上からつまんだクッキーを、カオルの前に差し出す。

「鋼牙・・・ ぷっ・・ うふふ・・
 あ、ごめんごめん、でも・・ありがと、せっかくだから・・・」

そう言って、俺の手首に手を添えて、そのまま顔を寄せクッキーを口に入れる。

「うん、やっぱりゴンザさんのクッキー、美味しい」

そう言いながら口を動かすカオルに、クッキーが無くなり宙に浮いたままだった手を伸ばし、頬を撫で、そのまま耳の下に差し込み、親指で頬を撫でる。

「少し痩せたか? 顔色があまりよくない、な・・」

「・・そう・・かな・・」

「昨日の夜は寝たのか?」

「ううん。 ・・・鋼牙」

「ん? なんだ」

「ゴンザさんに・・・ 何か聞いた? のかな・・・」

「いや、何も聞いていない」

「じゃあ、どうして? 
 鋼牙、普段ならわたしが絵を描いてる時は部屋に来るなんてしないじゃない?」

「そうだな。
 昼飯に呼びに来た時、お前がいつもと少し違っていたような気が・・したんだ。
 それと、カオルと・・ 一緒にお茶を飲みたかった。
 ただ、カオルの顔が見たかった・・ それは理由にならないか?」

「・・・ううん、なるけど・・」

「ならいいだろ? 今は冷めないうちに飲もう」

「うん。 ・・・ありがと、鋼牙」

お茶を飲み、カオルがお菓子を食べるのを黙ったまま眺めて過ごす。

本当は・・・ 何も言おうとしないが、いったいどんなことをゴンザに言ったのか、相談したのか、と、今すぐ訊きたい。
もし、カオルに話してくれる気さえあるのなら、このまま、すべて聞いてやりたいとも思う。
だが、横に座るカオルの顔色と表情を見ていると、それよりも先にしなくてはいけないことがある、そう思う。

「ごちそうさま~ 美味しかった。
 お昼食べなかったから結局クッキー全部食べちゃった、って・・ 鋼牙、なに?」

描いていたキャンバスの絵をじっと見ていた俺に気がついて、カオルが訊いてくる。

「この絵、いつまでに仕上げるんだ? そんなに急ぐのか?」

「その絵は、もう1枚とで合わせて2枚一緒に、で、一週間後が締め切りかな~」

「そうか・・・」

そう聞いて俺は立ち上がり、座っていたカオルに手を差し込み抱きあげる。

「え? 鋼牙?」

「これから夕方まで俺と一緒に昼寝だ」

抱えたまま、そう言った俺に、一瞬目をテンにしたカオルが驚いた声を上げる。

「・・・え~! でも・・」

「昨日は寝てないんだろう? 俺も一晩中動き回ってそろそろ限界だ。
 締め切りまでまだ先は長いようだし、睡眠不足ではいい絵も描けないだろう?
 だからこれは決定事項だ、カオル、諦めろ」

そのままベッドまで連れて行き、下ろすと靴を脱がせ、俺もそのまま強引に隣に潜りこむ。

「鋼牙ぁ・・」

「心配するな、言っただろう? もう、限界だと。
 本当にただ寝るだけだから、お前も諦めて目を瞑れ、俺と一緒に夕方まで寝ろ」

抱え込んだ腕の中、そう言いながらカオルの目元にキスを落とす俺に、それでもまだ・・

「でもね、わたし・」

「まだ昼寝する気にならないか? 
 それならそれで、俺が寝るようにしてやってもいい。
 どうする? カオル」

「・・・ん・・・昼寝・・する」

「よし、おやすみ」

「・・・おやすみ」

俺が目を閉じるとカオルも諦めたのか、最初は腕の中でごそごそしていたが、それもすぐに落ち着いて身体の力が抜けてきたか、と思っていると小さな寝息が聞こえてくる。

疲れているのに無理をして・・・

額にキスを落とし穏やかな寝顔を見ていたが、いつのまにか俺もまた、同じように眠りの中へと落ちていった。


突然、目が覚めた。
暗闇の中、カオルがいつもベッドサイドに置いている腕時計を手探りで探し引き寄せ見てみると、夕方どころではない、もうすっかり夜という時間だった。

しまった、寝過ごしたか・・・
しかし、ゴンザが起こしに来なかったところをみると、今夜 「指令書」 は来なかった、ということか。

胸のあたりから聞こえる規則正しい寝息に視線を移すと、窓からぼんやりと差し込む月明りに、暗くても夜目が利く俺には、安らかな顔で寝ているカオルの顔が十分見てとれた。

俺は起きるとして、カオルは? さて、どうするか・・・
このまま起こさないとたぶん朝まで目覚めないだろうし、かといって起こせば、これだけ寝たんだからと、たぶん今夜は徹夜して絵を描こうとするだろう。
しばし考えながら、寝ている間に解け広がったカオルの髪に指を差し込み生え際から何度も梳いていると、カオルが身じろぎし始める。

「んん~~ ぅ~ん・・・」

夕方まで、と言って無理矢理昼寝をさせたのは俺だ。
しかたがない、か・・・

身体の向きを変え横向きになり、カオルを抱き締め頬を重ね、耳元で小さく呼びかける。

「カオル・・ カオル・・・」

「・・・・・・こ・・う・が?」

「ああ。  
 カオル、悪い、俺もさっき目が覚めたばかりなんだが、もう7時を過ぎてる」

「あ~ 7時・・・ え? あ? もしかして、7時って」

「ああ、夜の7時だ」

「ええ~! 鋼牙、昼寝だ~って・・・ って、あはははは・・」

「・・・?・・・ カオル?」

「二人とも目が覚めなかったんだもん、しかたがないよ、ね?
 それにわたし、すごく頭が軽くなったよ? 鋼牙は? っていうか、あれ? 仕事は?」

「ゴンザが来なかったんだからたぶん何も無かったんだろう。
 それと、俺も身体がだいぶ楽になった気がする。
 今まで昼寝でも寝過ごしたことなんか無かったのに、カオルといっしょだと・」

「ちょっと~ 何それ? 寝過ごしたのってわたしが悪いの?」

「いや、責めているんじゃない、カオルと一緒だから、安心して寝ていたんだと思う。
 それよりも、カオル・・・
 頭が軽くなったようなんで訊くが、お前、俺に何か言いたいこと無いか?
 もしあるのなら、今聞いてやるから、何でも言ってみろ」

「鋼牙・・・」

「それとも、俺ではお前の役には立てないか?」

「ううん、そんなことないない、絶対ない。
 あのね、鋼牙・・ 鋼牙には納得できないことかもしれない話だよ?」

「・・・・・・」

「それでも、わたしの話、聞いてくれる?」

「ああ」

それから、腕の中カオルは、俺の胸に顔を埋めるようにしてぽつりぽつり・・話し始めた。
途中、何度も詰まりながら、全ては自分が悪かったの、と、それこそ何度も何度も言いながら、今の状況に至った経緯を話してくれた。

すべて聞き終わった後、俺は、なぜかカオルと初めて逢ったあの夜の事を思い出していた。
あの夜、お前は、 「画家として成功するかどうか最初のチャンスだったのに、それなのに人の人生めちゃくちゃにして・・・」 たしか、そう言っていた。
そうだな・・・
カオルの目指す、画家になるためには、俺には理解できない、数知れないたくさんの苦労があるんだろう。
それをカオルは一人で、誰の力も借りず、成し遂げようとしているんだ。

「鋼牙、これでわたしの言いたかったことは全部言ったよ?
 ね、聞いて、嫌じゃなかった?」

「別に嫌なんかじゃないさ。
 カオルは、一人でよく頑張っている、と思う。
 で? 今描いている絵が・・・」

「うん、画廊で紹介してもらったスポンサーの人に頼まれた絵、だけど?」

「2枚の他にもまだ描くのか?」

「ううん、これが最後、もう終わり」

「なら、あと1週間頑張れ。
 スポンサーといってもカオルの絵のファンの人なんだろう?」

「うん、そうだよ。
 前にその人に貰ったワイン、鋼牙と一緒に飲んだことあるけど、覚えてる?」

「たしか・・・ 奥さんの誕生日に、と言っていた?」

「そう、最初は奥さんが気に入ってくれてたんだけど、今では旦那さんも気に入ってくれてるの。
 自分のイタリアンのお店にわたしの絵を飾って、お客さんにも見てもらいたいんだって」

「なら、なおさら頑張らないとな。
 カオルはプロの絵描き、画家なんだから」

「うん、ありがと」

「挿絵の方は、いくら友達でも、一度話をきちんとしてみろ。
 親しき仲にも礼儀あり、だろう?
 引き受けたものだけきちんとこなしたら、後は、カオルの思う通りにすればいい。
 この屋敷で暮していれば、食べることだけは困らないだろう?
 カオルの描きたいものを描いて、好きなようにすればいい。
 それに・・・
 人の一生は、長いようで短い。
 カオルは、カオルらしい生き方をしろ。
 いいな」

「うん。 
 うん・・・鋼牙ぁ、ありがと」 

「それと・・・」

「・・・?・・・」

「これを言ったらお前は怒るだろうが、個展を開くのにどうしても金が要るなら・・・」

「・・・?・・・」

「いくら要るのか知らないが、俺がお前のスポンサーになってやろうか?」

「え? でもそれは・・・」

「俺は、お前の絵が好きだって言っただろう? お前の描く絵を見ていたい、と」

「でも、鋼牙、わたしは・・」

「お前は、俺には頼らず自分の力でやりたい、そう言うんだろう?」

「うん、そうだよ」

「わかっている。
 だが、カオルに言ってやりたかった、それだけだ。
 すまない、悪かった、忘れてくれ」

俺の頬をカオルが両手で挟み、触れるだけの口づけをされる。

「カオル・・・」

「ありがと、鋼牙・・・ 大好きだよ」

「ああ」

どちらからともなく抱きしめあう。
が、困ったことに、このままだと半月以上もお前に触れていなかった俺は・・・
なんとか、自分を押しとどめ、身体を離してカオルに話しかける。

「カオル、下りよう。
 ゴンザが晩飯作って待ってるはずだ」

「そうだね」

ぐぅぅぅぅ~~

「きゃあ~! 恥ずかしい!
 そういえばわたし、今日はクッキーしか食べてなかったんだった」

「ふっ・・ 起きるぞ」

ベッドから下りると、先にドアのところまで行き、開けた後、ドアノブに掛けた反対の手を、振り返りながらカオルに差し出す。

「ほら・・カオル」

「・・うん」

うれしそうに淡く微笑みながら手を差し伸べてくるカオルは、俺の・・
カオル、お前の手、お前を、俺はずっと離さないからな・・

「鋼牙、わたしの顔、どこか変? もしかして、髪がはねてる?」

「いや、なんでもない・・」


2012_09_29

Comments

こんにちは、心太様 

どうもすいません、返信がずいぶん遅くなってしまいました。
たしかに、心太様の言うように、何がしかのモノを創る、ということは、いろいろと難しいことが多いとと思います。
自分の好きな事だけをしていたいけど、生活はしなければいけないわけですから、暮らしていけるだけの仕事は意にそまなくてもやらなくてはいけない、気にいらない、嫌いな人にも頭を下げなくてはいけない。
無理な事を言われても何も反論してはいけない。
大人って、社会って、人間って、ややこしいし、難しいです。
カオルちゃんには支えてくれる人もいるんだし、偶然にも環境は万全のようだし、これからもう~んと頑張って欲しい、と思います。
そして・・・ 心太様も、頑張ろう、と仰ってますが、管理人も普段の生活もですが、もうちょっとまともな作文が書けるよう、地道に頑張りまする。
・・・あ、返信コメントも。
コメント、どうもありがとうございました。
また、よろしくお願いします。
なな  URL   2012-10-01 13:37  

はい、お題はすごいんです (#^.^#) 

> 久しぶりに一二三さんの書く文章(お題の部分)を読んでドキドキしました。
> お題という簡潔なメモ書きなのに、一二三さんの書く表現ってやっぱスゴイなと。
う~ん、そうですね、そう思います。

> 「んもう、なんでそんなに優しいねん… 馬鹿~」 って、鋼牙の胸をどんどん叩きたいですわぁ!
それをするには、まずは鋼牙の懐に入る? っていうか、ハグされなければいけませんが・・・ (苦笑)

>こうだったらいいのになぁ~という、なな様が出した答えのひとつの形ですね。
そうなのかな・・・?
書くには書いたけど、なんだかこの作文、書いてた間も、終わった今でも、すごく消化不良なんです。
どんよりと胸にもやもやが蟠っています。
このお題に限っては、すっきりさせるためにも、絶対もう一度時間をかけて書いてみたいと思ってます。
そして、お題を考えてくれた一二三さんに送って意見を聞いてみよう、と思ってます。

> でも、いつか書いてみたいなぁ~ と思いました!
今すぐ、Let’s try!
遠慮せず書いて送ってくださいませ。
待っていま~す。
なな  URL   2012-10-01 13:16  

おはようございます、かなまま様 

かなまま様、いつもいつも丁寧なコメントをありがとうございます。
あの・・・ たいしたものなんて全然書けませんけど、それでもよろしければ、どうぞ、遊びにいらしてくださいませ。 
<(_ _)>
なな  URL   2012-10-01 08:28  

お題、すごい! 

久しぶりに一二三さんの書く文章(お題の部分)を読んでドキドキしました。
お題という簡潔なメモ書きなのに、一二三さんの書く表現ってやっぱスゴイなと。

それを踏まえ、なな様の書く鋼牙の優しいことといったら…
「んもう、なんでそんなに優しいねん… 馬鹿~」 って、鋼牙の胸をどんどん叩きたいですわぁ!

好きなことを仕事にしちゃったら、絶対出てくるジレンマに悩むカオルちゃん。
鋼牙の優しさが、果たしてカオルちゃんにとってよいことなのかどうか…
大人を何年もやってると、いろんなことを考えてしまうのですが、こうだったらいいのになぁ~という、なな様が出した答えのひとつの形ですね。

いやぁ、お題で書けるのってスゴイですね~
自分は、スキマを妄想するしか能がないから、無理かも…
でも、いつか書いてみたいなぁ~ と思いました!
selfish  URL   2012-09-30 22:56  

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