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Cherry blossom viewing

2012.05.05(00:00)

「また、来年もやろう・・
 その次も・・・  
 そのまた次も・・・
 ずっと、毎年やろう・・・」
昨年のお花見が終わった夜、カオルにそう言った鋼牙。
と、いうことで、今年の、お花見は・・・?

去年のお花見は、ここをクリック → 「鋼牙、花見を経験する」




   ・・・ Cherry blossom viewing ・・・
                                <4.12.2012>
「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ただいま。
 ・・・?・・・ ゴンザ、カオルは?」

「はい、なんでもお友達の亜佐美様が
 風邪をひいて寝込んでいらっしゃる、とかで・・
 お見舞いと申しますか、差し入れを持って行って来るとおっしゃられまして。
 昼食は、鋼牙様お一人で、との伝言を言付かっております」

「そうか」

洗面へ寄って、それからダイニングに行く。

昼飯を食べ始め、ふと隣を見ても、居るべきところに座っている者がいなくて。
いつもなら横から聞こえてくる、いつ食べているのかと不思議なほどのおしゃべりも、今日ばかりは全く聞こえてこない。
せっかくのゴンザの料理も味気ない気がする、のは気のせいだろうか・・・

「カオル様がいらっしゃらないと、静かでございますね」

「・・・そうだな」

「鋼牙様、明日のお昼はお花見でございます」

「ああ、わかってる」

「去年いらした邪美様と鈴様はお越しになれなくて、
 今年は零様だけでございますな」

「鈴は魔戒法師の訓練所だし、邪美は仕事で旅に出ているらしいからな。
 翼も今年は来たい、そう言っていたが、邪美が長期不在ではな。
 まあ、こればかりはしかたがない」

「カオル様が、皆様に会いたかった、と、とても残念がっておられました」

「そうか。
 ゴンザ、明日の朝はいつもより早く出るから、すまないがそのつもりで頼む」

「お昼に早目にお戻りになるおつもりなのですね。
 わかりました、いつもより早めに用意しておきます。
 お花見の方も準備はもうほとんどできておりますし、お天気の方も・」

「晴れだな」

「はい、良いお天気になると思います。
 気温も天気予報によりますと、かなり上がるようでございます。
 桜の花もお花見の日に調子を合わせたかのようにいい咲き具合でして。
 ははは・・
 なにしろ、最初は開花が遅れておりましたのに、カオル様が・・」

「カオルがどうかしたのか?」

「はい、お花見の日を決めてからはもう毎日桜の木を見あげては、
 朝に、昼に、夕に、と、とにかく庭に出られましては、
 いつも木に向かって話しかけて、お願いをしておられました」

「お願い?」

「はい・・・
『ねえねえ、あと10日でお花見なの。 
 その日はね、鋼牙と、それから零君も来るの。
 桜さん、だからお願い、絶対にその日にはキレイに咲いてね~』
『そろそろ咲くよね? もう咲くよね?
 ねぇ~ 早く咲いてくれないと間に合わないよ?
 桜さん、大丈夫?』
『うん、いいよ、いいよ、いい感じ~ その調子だよ~
 もうちょっとだからお願い! 頑張ってね、桜さん』
 と、まあ、そのような感じで・・ 誠心誠意、熱心に、 
 ”桜さん” に話しかけられては、お願いしておられました」

「・・・・・・」

カオル・・・ 
お前、そんなに毎日木に話しかけて・・ 木が言う事を聞いてくれるのか?
そんな話、俺は見たことも、聞いたこと無いぞ。

「鋼牙様、もう、およろしいので?」

「ああ、せっかくだが、今日はあまり腹が空いてない。
 ゴンザ、俺はこの後、夕方まで書斎に籠るから」

「畏まりました。
 では、カオル様がお戻りでなければ、
 お昼のお茶はお部屋の方にお持ちいたします」

「ああ、頼む、そうしてくれ」

書斎に行って、机の前に座って。
箱の上に台座を出し、ザルバを指から外してその上に据える。

『明日の昼は、花見か・・』

「ああ。
 去年やった時、来ていたみんなもカオルも、すごく喜んでいたから、
 来年も花見をしよう、そうカオルに言ったんだが・・
 今年、来るのは零だけだし、なにしろするのが昼間だからな。
 いくらなんでも昼から酒を飲むわけにもいくまい。
 だから、花の咲いた桜の木の下に座って、
 花を眺めながら静かに4人で昼飯を食べる。
 たぶん、そんな花見になるはずだ」

『ふ~~ん・・・』

「・・・?・・・」

『いや、この家もずいぶん年中行事が増えて賑やかになったもんだ、
 そう思ってな』

「そう、だな」

『ま、カオルだけじゃあなくて、ゴンザも一緒に楽しんでいるようだしな。
 ふふ・・ かくいうお前さんもあまり悪い気はしてないんだろ』

「俺は別に・・」

『まあいいじゃないか。 
 いつもカオルに付き合わされてる、そういうことにしておいてやるよ』

「勝手に言ってろ! 俺は仕事をする」

『くっくっく・・・』

まったく・・  
『お前ら人間の考えることは俺様にはよくわからん』  いつもそう言うくせに。 
たまに仕事以外のことで口を開けば、あまり表に出したくないような他人の胸の内を突くようなことばかり・・・

俺は話を打ち切ると、顔を引き締め、机の上に溜まった書類を片付けるべくペンを手に取り、視線を手元に落とした。


昼のお茶の時間になってもカオルは戻らず、夕方になってもまだ戻って来ない。
遅いな・・ 何かあったのか? 
書き物仕事も一段落して、リビングで本を読みながらそう思い始めた頃、ゴンザがやってきた。

「鋼牙様、カオル様なんですが・・」

「カオルがどうかしたのか?」

「いえ、亜佐美様の熱が全然下がらないので、
 今夜はあちらに泊まりこんで看病する、と、今連絡が入りました」

「そうか・・」

「明日の朝には絶対帰るから、そう、鋼牙様にお伝えするよう言われました」

「わかった」

そうか・・ カオル、今夜は帰って来ないのか・・・

晩飯も昼と同じで、一人で食べているととても静かだった。
「火が消えたような、とはこのようなことを言うんでしょうな」
ゴンザもそう、言っていたが・・・

指令書は来ず、だからといって仕事もきれいに片付いている今日は、別にこれといってすることもなく、しかたがないので風呂にさっさと入ったものの、部屋に上がってもやはり何もすることが無い。
持って上がったボトルの水をベッドに腰掛けて飲んでいると、テーブルの上にカオルが置いたままにしている画集と、珍しく置き忘れている小さなスケッチブックが目に入った。
テーブルまで行ってスケッチブックを手に取り、ソファーに座って最初から捲ってみる。
一枚・・ また一枚・・・
本を読んでいたり、夜食を食べていたり、時にはカオルを待っている間にうたた寝していたり・・・
何枚捲っても、俺の絵、ばかり。

カオル、俺は・・・

目を閉じれば、頭の中にいろんな表情のカオルが思い浮かぶ。
笑って、泣いて、怒って、拗ねて・・  中には俺しか絶対に知らない時の愛しい顔も。
ここに描かれている俺に比べて、お前はなんて表情豊かなんだろうな・・・

一緒に置き忘れている鉛筆を手に取り、スケッチブックの次のページに手をはしらせてみる。

そういえば・・・ 俺が、こうやって絵なんてものを書いたのは、いつのことだったろうか。 
ふっ・・ だめだな、あまりに昔過ぎて、もう、思いだせもしない。
ん・・ やはりダメだな。
頭の中に浮かぶカオルの笑顔・・ 目を閉じればこんなに鮮やかに頭の中に浮かぶのに、いざ描いてみると10分の1もあの笑顔を描けやしない。

描いたページを破り取り、スケッチブックと鉛筆を元通りテーブルの上に戻すと、破ったページは自分のデスクの上に裏返して置いて、そのまま部屋の灯りを消してベッドにもぐりこむ。

カオル・・ お前は今夜、一晩中起きて看病してるんだな・・・
あまり、無理するなよ。

「おやすみ・・ カオル・・・」

隣にはいないのに・・・ 
自然と横を向いた俺は、カオルの描いてくれた自分の絵に向かってひとこと、そう呟いた。
そして、無理矢理頭の中を空っぽにして、身体を休ませるために、静かに目を閉じ眠りについた。



翌朝、起きて朝飯を食べると、いつものように朝の浄化の仕事に出掛ける。
ゴンザには、準備を一人で悪いが、カオルが帰って来たら、昼まで少しでも寝るよう言ってくれ、と頼んでおく。
たぶん、カオルのことだ、一晩中起きていたはずなのに、帰ってきたらゴンザと一緒に花見の準備をする、と言い張るにちがいないから。


昼前、家までの帰り道、最後の森の中の坂を歩いて上っていると、後ろの方からなにやら俺の名を呼ぶ声が・・・

『おい、あの声、零のやつじゃないのか?』

「ああ、どうやらそのようだ」

しかたなく、立ち止まり後ろを振り向くと、零はすぐに追いついて来て、俺の横に並ぶ。

「よう、鋼牙。
 和菓子屋に寄って来たんだけどさ、約束の時間に少し遅れたかと思って焦ったぜ。
 で~も、鋼牙がここってことは、なんとか間に合ったってことだよな。
 よかった~」

「零・・・ いつもすまないな」

「い~んだよ! 俺がカオルちゃんと一緒に食べたくて持ってきてるんだから。
 でも、鋼牙・・
 ほんとにすまないと思うんなら、お前もたまには、食べてみろよ」

「零・・ それは・・・
 それよりも、ゴンザが準備して待ってるはずだ、そろそろ行くぞ」
 
「オッケ~」

紙袋を持った零と一緒に最後の緩い坂を上っていった。


「おかえりなさいませ、鋼牙様。
 零様も、ようこそ、いらっしゃいませ」

「はい、ゴンザさん。
 これ、この前言ってた桜餅・・」

「零様、どうもありがとうございます。
 それでは昼食のあと、お出しいたします」

「ゴンザ、カオルは? 寝てるのか?」

「はい、お戻りになられ、お手伝いする、やはりそう言われたのですが、
 鋼牙様のおっしゃられたとおり、昨晩は寝ておられなかったらしく、
 目の下がひどい隈で・・・
 それで、シャワーして、少しでもお休みなになられるようお願い致しました。
 今はご自分の部屋でお休みになっていらっしゃいます。」

「そうか・・
 零も来たことだし、カオルを起こしてくる。
 ゴンザは準備の方を頼む。
 零、悪いがもう少し待っていてくれるか?」

「あ、俺ならゴンザさんの手伝いしてるからさ、
 お前は気にせず、カオルちゃんのところに行って来いよ」

「ああ、すまない」

「いいってこと!」

ウインクしながら、ゴンザの後をついていった零を見て、俺はコートを脱ぐと、洗面に行ってから、カオルの部屋へと階段を上っていった。

静かにカオルの部屋のドアを開けてみる。
カーテンを閉めて暗くした部屋の中、たぶん熟睡しているんだろう、カオルの規則正しい寝息が聞こえてくる。
側まで歩いていくと、本当に深い眠りに落ちている、そんな感じだ。

疲れているんだな・・・
このまま寝かせておいてやりたいが、そうもいかないか・・

ベッドの横に腰掛けて、額や頬ににかかる髪を梳き流しながら顔を見ていた。
が、そのまま、という訳にもいかなくて、肩の横に手をついて屈みこみ、耳元で小さく呼びかけてみる。

「カオル、カオル・・」

「ん、ん~~ は~ う~ん・・」

「カオル・・ 昼だぞ」

「ん~~・・・ ん~? こ・・うが?・・」

うっすらと開いた目は、開いた、とはいっても、まだぼんやりとしていて視点が合っていないようだ。
それよりも、俺の名を呼び、目と同じように薄く開いた唇、そっちの方に目が釘付けになり・・
そっと重ね、優しく食んでみる。

「ん・・・」

無意識に応えようとする、そんなカオルが愛おしくて、思わず舌を滑り込ませ少しだけ絡め合わせて・・
そっと顔を離す。

「はぁ――・・」

「ただいま・・ 零がもう来てる。
 カオル、大丈夫か? 起きれそうか?」

「ん・・ おかえり、鋼牙。
 うん、少し寝たから大丈夫、起きるよ」

「そうか」

頬を撫でながら、ほんのわずか見つめて、腕をまわし起こしてやる。

「ありがと、鋼牙」


下に降りて庭に出ると、桜の樹の下に敷きものが敷かれ、ゴンザの準備したお重に入れられた料理が並べられていた。

「おっはよ、カオルちゃん。
 徹夜で看病してたんだって? 大丈夫?」

「零君、いらっしゃい。
 ありがと、大丈夫だよ。 
 ゴンザさん、わたし、何もお手伝いしなくてすいません」

「なにをおっしゃいますか、そんなことは大丈夫ですよ。
 ささ、お座りになって、満開の桜の下、お花見を楽しみましょう」

「はい、ありがとうございます。
 うわぁ~ 美味しそう~
 わたし、ほとんど食べずにすぐに寝ちゃったんでもうお腹、ぺこぺこ~」

「どうぞ、たんと召し上がってくださいませ」

「は~い。
 あ~ どうしよう、何から食べよう~ 迷うなぁ~」

「カオルちゃん、この出し巻き卵、めっちゃ美味しいよ~」

「ほんと? わたしも食べる~ ね、鋼牙も食べよ」

「ああ・・」

今年の客は零だけ、それも普段からよく来ているから、遠慮も気兼ねも全然無いし・・・

「鋼牙様も零様も、昼間ですが、軽目のワインぐらいなら構わないでしょう?
 少しだけ、いかがですか?」

ゴンザがそう言いながら出してきたのを飲みながら昨年同様、ゴンザも一緒に桜を見ながら楽しむ。
食事の最後、零のやつに、

「人数分買ってきたからお前も食べろ」

そう言われ、押し付けられ、渡されて・・ 
カオルもゴンザも笑う中、桜餅なんてもの、何年かぶりに食べ、茶を飲んだ。


「じゃ、カオルちゃん、鋼牙、今日はサンキュ、楽しかった。
 ゴンザさん、ごちそうさまでした」

「いえいえ、お粗末さまでございました」

「零君、また来てね」

「うん、またね~」

優しい笑顔で手を振りながら、零は帰って行った。

そのあと俺はソファーに座って本を、カオルは隣で雑誌を読んでいたはず、だったんだが・・
ふっと、時折話しかけていた声がしなくなったことに気がついて横に目を向けると、雑誌を持ったままソファーに凭れて寝てしまっていた。

そうか・・ そういえば、徹夜で疲れて寝ていたのを昼に起こして花見をしたんだった・・・

自分のと、持ったまま寝ていたカオルの本をテーブルに置くと、先にドアを開けに行った後、抱え上げたカオルを部屋へ運ぶことにする。
本当に疲れて、しかも眠りが足らなかったところに食べて腹が膨れたからだろう、抱き上げて階段を上っていても、起きそうな気配さえ全然しない。
カオルの部屋の中に入り、ベッドに下ろして寝かせてやり、端に腰掛けて、胸の上に置いていた指輪の嵌まった左手を手に取ったまま、無防備な表情の寝顔を見つめる。
す――・・ す――・・ 
規則正しく聴こえる寝息を聞きながら顔に掛かった髪を指先で直してから、指の背で頬を撫でていた。
そして・・ 指先で唇を、そっとなぞってみる。

「カオル・・・」

握っていた手の指に口づけて、元に戻すと静かにカオルの部屋から出て行く。

と、ドアの外にゴンザが立っていた。

「ゴンザ?」

「申し訳ございません、鋼牙様、ただ今これが・・・」

指令書か・・・

「わかった、下で見る」

「はい」

リビングで指令書を読み、カオルのことをゴンザに頼んですぐに出掛ける。


指令書が来たのが早かったものの、探索に少し手間取り、日付が替わろうか、という頃にやっと戻ってきた。

『すまなかったな、鋼牙・・
 相手自体はたいしたことはなかったのに、ちと探すのに時間がかかりすぎたようだ。
 ずいぶん遅くなった』

「まあ、今夜はしかたがないだろう。
 民家の密集したような場所だったし、わかりにくいところだった」

『そうだな』


「ただいま・・
 ゴンザ? 何をしている?」

「これは鋼牙様、おかえりなさいませ。
 申し訳ございません、しばらくお待ちを。
 カオル様にお茶をお持ちしてまいりますので」

「カオルに茶? あいつ、寝てるんじゃなかったのか?」

「いえ、2時間ぐらい前にお目覚めになりまして。
 目が冴えたから、と仰いまして、スケッチブックを持って今はお庭の方に。
 寝起きでございますし、冷えて参りましたので、
 温かいお飲み物をお持ちするところです」

『カオルのやつ、夕方から寝ていたからなぁ~』

「ゴンザ、あとはもういい。
 それは俺が持って行く。
 代わりにすまないがザルバを頼めるか?」

「はい、それはかまいませんが・・」

『カオルに付き合うのもいいが、さっさと寝ろよ~ 鋼牙』

「わかってる。
 じゃあな、ザルバ・・ また明日だ」

「それでは鋼牙様、失礼いたします」

「ああ・・・」


ミルクティーを載せたトレイを持って庭へ行く。

なるほど・・・

昼間花見をした桜の樹のほとり、ゴンザに出してもらったんだろうが、カオルが椅子に座ってスケッチブックに鉛筆を走らせていた。

「カオル・・」

「あ、鋼牙、おかえりなさい」

「ただいま。
 桜が咲いてる、と言ってもまだ夜は冷える。
 カオル、起きた後こんなところにいつまでもいると風邪をひくぞ」

「ん・・ そうなんだけど・・
 なんだかね、お花見した今日のうちに描きとめておきたかったんだ~
 桜さんを。
 あ、ありがと・・  
 おいし、それにあったかぁ~い」

「カオル、それ飲んだらもう風呂に入れ。
 入ればたぶん眠くなるだろう?」

「うん、そうだね・・ でも、もう少しだけ。
 あと10分ぐらいで描き終わるから。
 ね、鋼牙、鋼牙が先にお風呂入ってて」

「いや・・ それならここにいよう。
 カオル、描くとき俺が側にいるのは嫌だろうが、
 それでも隣にいれば少しは暖かいだろう?」

「鋼牙・・ ん、ありがと。
 じゃあもうちょっとだけ付き合ってね」

「ああ・・」

カオルはミルクティーを飲み干すと、もう一度スケッチブックを手にとった。
近くで俺を描いたりすることはよくあるが、すぐ隣で絵を描いているところをみる機会はあまりない。

見事だな・・・
まるで写真のように桜の樹を写し取っていく。

「出来た! 鋼牙、お待たせ。
 ・・・?・・・
 鋼牙? どうしたの?」

「いや、上手いものだな、と思ってな」

「そお? 一応、これでもプロですから」

「そうだな・・ さあ、カオル、風呂に入れ。
 よく温まって、出たらそのまま俺のベッドに先に行ってろ」

「え、いいの?」

「ああ。
 もしも寝付けなかったら一人じゃない方がいいだろう?
 ただし、俺だけ先に寝たとしても怒るなよ」

「やだ、疲れてる鋼牙に、そんな~ 怒らないよ~
 その時は一晩中、横で鋼牙の寝顔を見てるから大丈夫」

「ふっ・・ そうか」


中に入りカオルを先に風呂に行かせて、入れ換わりに入って、2階の部屋へ上がると・・・
カオル、ベッドには入って寝転んでいるようだが・・

「寝れないのか?」

ベッドに腰掛け水を飲んで、カオルの横に身体を横たえようとした俺の目の前に、黙ったままカオルが何かを差し出す。

「ね、これ、鋼牙が描いたんだよね?」

「・・・!・・・ 
 おい、カオル、これ・・」

「窓辺に行ってカーテン閉めようとしたら、机の上に目が行ったの。
 だって、スケッチブックを破いたように見えたから。
 それでね・・ これ・・」

「絵なんて、思い出せないぐらい昔、小さいガキの頃に描いて以来なんだ。
 あまりにも下手すぎて笑っただろ?」

「え~ そんなことないよ。
 鋼牙、絵はね、キレイに描くだけじゃダメなの。
 キレイなだけなら描かなくても写真を撮ればいいんだもの。
 あのね、絵はね、描く人の心がこもってないとダメなの。
 これ、描かれてるのって・・ わたし、だよね?」

「ああ」

「鋼牙、この絵、貰ってもいい?」

「画家のお前が俺の描いた絵なんかを欲しがるのか?」

「うん!
 だって、この絵には鋼牙の優しい気持ちがいっぱいこもってるもの」

カオル・・・

「・・・好きにしろ。
 俺はもう寝る」

「ありがと、鋼牙」

サイドテーブルに置いて、灯りを消し、ベッドに横たわった俺に、カオルが寄り添ってくる。

「鋼牙・・」

「どうした?」

「ね、いつものように腕枕して?」

胸の上に置いていた腕をカオルの頭の下に差し込んでやり、目を瞑る。

「鋼牙・・」

「俺はもう、寝た」

カオル・・?
身体を起こして、いる?

急に唇に柔らかくて温かいモノが重なり、すぐに離れていった。
目を開けると、目の前にカオルの笑顔が・・・

「今年もお花見をしてくれてありがと。
 鋼牙、今年も一緒に見れてよかった。
 わたし、うれしい。
 来年もまた一緒に見ようね」

「・・・ああ」

「おやすみ、鋼牙」

「おやすみ。

 カオル・・・」

「なぁに? 
 ごめんね、もう鋼牙の寝る邪魔しないから・・」

「いや、そんなことじゃない。
 来年も ”桜さん” へのお願い、頼んだぞ」

「・・・ん・・・」

頷いただけの返事だが、微かにうれしそうな感じがした。

そして、俺は、カオルの髪に頬を押し当て、ゆっくりと意識を手放した・・・



コメント
うんうん、面と向かっては言わないけど、生涯ただ一人の大事な愛しい人で、ずっと恋人で、宝物だろうな・・・ と、私は思ってるんです。
私がもし男なら、そういう一生を過ごしたいな、と。
な~んて、まあいつもそんな気持ちで書いてるので、ついつい甘甘になっちゃうんでしょうね。
(*^_^*)
【2012/05/11 03:20】 | なな #- | [edit]
hitori様、こんばんは。
ふふふ・・ 大丈夫ですよ~ もう書き始めてますので。
(たしか今、2日目あたりですか・・・?)  
ただ、なかなか効かない咳止めの薬が効いてくるとすぐ寝てしまうので、なかなか進まなくて・・・
今しばらくお待ちくださいませ、でございまする。(*^_^*)
【2012/05/11 03:08】 | なな #- | [edit]
ななさんの優しい鋼牙さんを読みたいなぁ.。o○ほら、hitoriの心の中には鬼畜ドS
鋼牙しか住んでないから(爆)
本当に此処に来ると心が洗われるような気が致します。嗚呼・・・人って優しいのねって←病んでるhitoriまぢ病んでる

【2012/05/10 21:08】 | hitori #Q8SYUW.A | [edit]
はい、よろしくお願いされました。 (^o^)丿
で、でも・・・ 書くのはともかく、UPしてもいいのかなぁ~? 
う~ん、悩んでしまいそうです。
【2012/05/10 00:23】 | なな #- | [edit]
ううむ・・・
自分で書いておいて、鋼牙がどれぐらいの絵を描けるのか、いまだにイメージが湧かないんですよ・・・
浮かんだのは、ソファーに座って、あの端正な横顔で、真剣に描いてる構図だけ、です。
絵、上手いのかな~? 鋼牙。
【2012/05/09 23:45】 | なな #- | [edit]
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