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White day 2012

2012.04.14(00:00)

『今回(バレンタイン)の零君、かわいそすぎますね。
 ぜひ、ホワイトデーには、仕返しをしてほしいものです。
 カオルへのお返しとして、鋼牙にはついていけそうにないところ
 (例えばケーキバイキングとか)に誘うとか』


1周年記念募集リクエストで来ていたお題、管理人No.7 です。
う~ん、天然で、悪気なんか100%無いカオルに、優しい零君が仕返しと言われてもな~ (悩) 
零君って、根本的に女の子に優しいし、しかも、今回手作りチョコを零に振ったのは、鋼牙だったはず。 
いや、零君本人は知らないけど。 (悩悩) 
え~ どうしよ~?! (悩悩悩)
かなり悩んだんですが、どう考えても、リクエストそのままの要望には添えそうになくて、今回は、ちょっとだけ鋼牙に・・・ っていう感じに落ち着くに到りました。
カオル手作りの渾身の5色チョコレートを貰って食べた零君と、カオルのあま~いプレゼントを貰った鋼牙。
1ヶ月後のホワイトデー、いったいどうなったんでしょうね。

昨年のホワイトデー、今年のバレンタイン関係は、以下をクリックです。
「ホワイトデー 2011」
「A thing sweeter than chocolate !」
「Chocolate is a taste of a nightmare」


   ・・・White day 2012・・・
                         <2.12.2012>

「零様、お茶をどうぞ」

「ありがと、ゴンザさん」

「せっかくお越しいただいたのに申し訳ございません。
 鋼牙様は今日は夕方の帰宅と聞いておりますし、
 カオル様も出版社からの急なご依頼でお出掛けになりまして・・・」

「気にしないでいいよ、ゴンザさん。
 いつも通りにふら~って遊びに来た俺が悪いんだからさ。
 持ってきたケーキ、カオルちゃんが帰ったら出してあげてよね。
 俺、このお茶を飲んだら帰るから」

「はい、畏まりました。
 カオル様には今夜お出しいたします」

リビングのソファーで、ゴンザさんの淹れてくれた紅茶を飲む。
ん――・・・ いつもながら、美味しいなぁ。
そのへんのお店なんかよりもゴンザさんの淹れてくれた方がマジで何倍も美味しいと思う。
そういえばゴンザさんて、いつも持ってきたケーキに合わせた飲み物をチョイスして淹れてくれるんだよね。
紅茶、コーヒー、日本茶、ハーブティー、抹茶、チャイ・・・
鋼牙、お前は当たり前すぎて当然と思っちゃって全く気付いてないだろうけど・・・
いいよなぁ~ ほんっと最高のぜいたくだよ。
最愛のカオルちゃんが傍にいて、執事という肩書きはあるものの家族のようなゴンザさんまで傍にいて。

「ねえ、ゴンザさん」

「なんでございましょう、零様」

「バレンタインの次の日、鋼牙は調子崩してなかった?」

「零様?」

「いや、ここだけの話、あの後ね、俺、丸1日お腹の調子がさ・・・
 だから、鋼牙もかな? って思っただけなんだけど」

「それはそれは。
 私の努力が足りずあの時は、申し訳ございませんでした。
 鋼牙様は、翌朝、別段変わった様子は無かったようでございます。
 ただ、もし何かあったとしてもカオル様がいらっしゃることですし、
 鋼牙様が表に出すことはございませんでしょうから、本当のところは私にも・・」

え――?! 鋼牙ってば、マジでなんともなかったのかよ~
まさかとは思うけど、カオルちゃんの手作りに耐性ができたとか?
それとも、あの薬を飲んでカオルちゃんの前で必死の痩せ我慢か?
う~~ん、どっちだったんだろう?

「そっかぁ・・・
 ところでさ、あと1週間もないけど、
 鋼牙はホワイトデーのこと、ちゃんと頭にあるのかな?」

「さあ・・
 でも昨年はカオル様と一緒に夜、お出掛けなされていましたし、
 最近はとても仲がおよろしいので大丈夫だと思います」
 
「ならいいけどね。
 う~ん・・ 
 手作りチョコを貰ったことだし、俺もカオルちゃんに何か考えないとね。
 さ~てと、お茶も飲み終わったし、ぼちぼち帰りますか。
 ゴンザさん、ごちそうさま、美味しかった」

「ありがとうございます。
 では、お送りいたします」

「いや、いいよ、勝手に帰るから。
 あのさ、一応鋼牙にホワイトデー、忘れないように言っといて。
 俺もカオルちゃんに貰ったから、お返しを持ってその日にまた来るよ」

「はい、畏まりました。
 14日に零様が来られることも、カオル様と鋼牙様に伝えておきます」

さ~て、味はともかくとしても、カオルちゃんなりに精一杯頑張ったチョコを貰ったことだし、気合入れてホワイトデーに何を贈るか考えるとするかな。
鋼牙のカオルちゃんだけど、ホワイトデーのお返しは・・・ 負けね~ぜ、鋼牙!


ガチャッ ・・・・・ バタン

「おかえりなさいませ、鋼牙様」

「ただいま。
 ・・・ゴンザ、カオルは?」

「カオル様は、朝、鋼牙様がお出掛けになられた後、
 出版社から急にお仕事の連絡が参りまして、お出掛けになりました。
 それと先ほど、カオル様から連絡が入りまして、
 どうやら打ち合わせの方が長引きそうな感じなので、
 今夜のお夕食は外で食べてお戻りになるそうでございます」

「そうか」

仕事か、それならしかたがない。

「それと・・」

「・・・?・・・」

「今日の昼、零様がいつものようにお越しになりまして、
 カオル様にはケーキを、鋼牙様には伝言をお預かりしております」

「零から俺に伝言?」

「はい。
 カオル様へのホワイトデーを忘れないように、とのことでございます。
 それと、カオル様のチョコレートをお食べになったので、
 ホワイトデー当日の14日に、お越しになるとのことでございます。
 たぶんカオル様に何かお返しを、と考えていらっしゃるのでございましょう」

「そうだな・・ わかった、俺も何か考えておく」

ソファーに座って、ゴンザの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、一息つく。
ホワイトデー、か。
そういえば、去年のホワイトデーはカオルの希望で夜の街を歩いてお薦めの喫茶店に入って・・・
ふっ・・ あのプリクラ騒ぎから、もう1年経つのか。
それにしても、零の奴は一体何をカオルに渡すつもりなのか。
たぶん、世間慣れしているあいつのことだ、卒なくカオルの喜びそうなモノを用意するだろう。
それにひきかえ俺は・・ 
カオルを喜ばせてやりたい、笑顔を見たい、そうは思うが、いったい何を用意すればいいものかさっぱりわからん。
飲み終わったカップをテーブルの上に置き、背もたれに深く凭れて目を瞑る。
カオルを思い浮かべてゆっくりと考えてみるが、何も思いつかない。

「ダメだな・・」

『おい、鋼牙、何がダメなんだ?』

ソファーの上に投げ出した左手から聞こえてきたザルバの声に、頭の中で考えていたことを、知らない間につぶやいていた事実に気付く。

「いや、俺は・・ つくづく戦うことしか能のない男なんだな、そう思っただけだ」

『ふ~ん どうせ、零に比べて俺は、な~んて考えてたんだろ?』

「・・・・・」

『ふふ・・ 図星か?  でもまあ、心配するな鋼牙。
 カオルのやつはな、零がどんなにいいモノを贈ったとしてもだ、
 結局最後はお前の方のを喜ぶさ』

「・・・・・」

左手を目線まで持ち上げ、無言で見る。

『お前、魔導輪の俺様の言うことを信じられないのか?』

「仕事のことなら信じるが、さすがにこればかりはな」

『大丈夫だ、俺様は嘘は言わない』

「・・・・・」

『お前はお前の出来ることを、素直にすればそれでいい。
 俺はそう思うがな』

「・・・そうだな」

『まあ、まだ時間はある、ゆっくりと考えてみろ』

「ああ」

手を下ろすと、俺はもう一度ゆっくりと目を閉じた。


晩飯を食べ終え、テーブルでお茶を飲んでいると、あと1時間ほどでカオルが駅に着くという連絡が入ったと、ゴンザが教えてくれた。
今夜は、指令書も来なかったしな・・・

「ゴンザ、カオルは俺が迎えに行く。
 だから今夜はもういい、後は好きに過ごしてくれ」

「よろしいのですか? 鋼牙様」

「ああ、たまにはお前も自由にしてくれ」

「ありがとうございます。
 それでは、今夜はこれで失礼いたします」

そのまま、軽い足取りで消えたゴンザを見送り、お茶を飲み終えた俺は湯のみを片付ける。
テーブルの上に置いてある箱の蓋を開け、ザルバを箱の中にしまいコートを着ると、家から駅への道をゆっくりと下っていく。
ゴンザではなく俺が迎えに行ったらどんな顔をするだろうな・・
そんなことを考えながら駅に着くと、俺はいつものように道一つ隔てた街路樹のところで、カオルが駅に着くのを待つ。

どうやら駅に電車が入ってきたようだ。
たくさんの人が中から一斉に出てくる。
ん? カオルが出てきた、が・・・ たぶんゴンザの車を探しているんだな、車寄せの辺りをキョロキョロ見まわしているのが見える。
しかたがない。
ポケットの中から携帯を出すと、カオルに電話を掛ける。
気付いたか?
鞄の中から携帯を取り出して着信画面を覗き込んでいる。
急に顔を上げて、驚いた顔で真直ぐこっちの方を見た、と思った途端、俺のことを見つけたんだろう、驚いた顔から、瞬時に笑顔に変わっていくのが見える。
カオル、まだ呼び出し音が鳴ったままなんだがな、取らないつもりか?
携帯を耳に当てたままの俺に気付いたカオルが、慌てて携帯を受けて耳に当てている。

「鋼牙ぁ――! 鋼牙が迎えに来てくれたんだぁ~」

「おかえり、カオル」

「ただいま! い、今、今すぐそっちに行くからね!
 
 うわっ! きゃぁあ~~ 鋼牙のお迎えだぁ~~」

ふっ まったく・・ カオル、叫ぶのは電話を切ってからにしろ。
喜ぶのはいいが、お前、全部丸聞こえだぞ。
俺は携帯を切って、ポケットにしまうと、横断歩道の方に歩き始める。
信号が替わり、笑顔のカオルが早足で渡って来た。

「ねえ鋼牙、今夜はどうしたの?」

「指令書も来なかったし、まあ、たまにはな」

「わたしね、ゴンザさんが来てくれるんだとばかり思ってた」

「ふっ・・ 俺の迎えでがっかりだったか? 
 俺の迎えは車じゃなくて歩きだしな」

「ううん、そんなことないよ! すご~くうれしい。
 わたし、ゴンザさんには悪いけど、鋼牙の方がうれしいし、それに・・」

「・・・?・・・」

「わたしが手を繋ぎたいのは鋼牙だけだもん!
 だから、車じゃなくて歩いて帰るのも、鋼牙とならすっごく楽しいよ。 
 ね、手、繋いでくれる?」

上目使いに見あげられ、俺は黙って左手を差し出してやる。
と、嬉しそうに笑顔で右手を繋いできて・・
お互いに手を握り締め、目で笑い合う。

「帰るぞ・・」

「うん」

いつものように、他愛無い話をしながら、家路につく。
今日、仕事の電話が急に掛かってきたこと。
それが小さい子を対象に出されている月刊の絵本雑誌の仕事で、依頼されたのが嬉しくて、ふたつ返事で引き受けて、さっそく打ち合わせに行ったこと。
挿絵を描く予定の絵本のストーリーを書いた人と初対面の顔合わせで意気投合して、打ち合わせの後、晩ご飯を食べながらいろいろな話をしたこと。
楽しそうに仕事の話しをするカオルは、とてもキラキラ輝いていて・・ 自分の目指す道をまっすぐ歩いて登っている、そんな感じがする。
カオルがうれしければ俺もうれしいはずのに、いや、実際うれしいのに。
反面、心の中で、なぜかカオルが遠くなっていくような、そんな気もして、ほんのわずかだが寂しい、と感じてしまう俺は・・・

「鋼牙・・ どうしたの?」

「ん? なんでもない。
 カオル、やりがいのある仕事に巡り合えてよかったな」

「うん。
 でもね、月刊誌の仕事だから、また当分は忙しくなっちゃうと思うんだ。
 ごめんね、鋼牙」

「べつに、お前が俺に謝る必要は無いだろう?」

「うん・・ それはそうなんだけど。
 でも、鋼牙・・ ありがと」

「カオル・・・
 そういえば今日の昼、零のやつがお前に、とケーキを持って来たそうだ」

「え、そうなんだ。
 でもさすがに今夜はもう食べれそうにないな~
 明日食べてからお礼を言っとくね」

「そうしろ。
 カオル、歩いたし疲れてるだろ? 先に風呂へ入って今夜は早目に寝ろ」

玄関ドアを開けて中に入り、カオルに先に風呂に入るよう勧める。

「ありがと、鋼牙。
 でも、今夜はまだ早いし・・ 
 ね、1時間でもいいからお風呂の後で話ししちゃダメかな?」

そんな顔してカオル・・ 俺が断われるわけないだろう。

「なら、さっさと風呂に入って俺の部屋で待ってろ」

「やった~ じゃ、先にお風呂に入って、上で待ってるね」

「ああ」

打ち合わせの道具が入った鞄を持って部屋に駆けあがったと思ったら、すぐに今度は着替えを持って駆けおりてきて風呂に走って行った。
なにもそこまで慌てなくてもいいと思うんだが・・ ほんとにいつもせわしい奴だ。
カオルが出た後、入れ換わりに俺も風呂に入り、上に上がる時、ワインとグラスを持って上がる。
ドアを開けると、たぶん絵本の資料なんだろう、ソファーの上へ上がりこんで膝を抱えるようにして読んでいた。

「あ、鋼牙・・」

「待たせたな、カオル。
 これを持ってきたんだが、少しだけ一緒に飲むか?」

「それって、ワイン?」

「ああ。
 カオル、嫌いじゃないだろう?」

「そうだけど、わたし、すぐに酔っちゃうし、寝ちゃうかもよ~」

「わかってる、だから少しだけだ」

グラスをテーブルの上に置いてワインを開け、グラスに注ぐ。

「ほら・・」

「ん、ありがと」

カチン・・

「鋼牙?」

「カオルがいい仕事に巡り合えたことに・・」

「うん・・ 鋼牙、ありがと。

 ん~~ おいしい」

描く挿絵のをはなしを聞きながら、ワインを飲む。

「カオル、お前、けっこう飲んでないか?」

「ん~~ そだね、そうかもしんない。
 うふふ❤ なんだか身体がふわふわしてるもん。
 ね、鋼牙・・ 今夜、鋼牙と一緒に寝てもいい?」

俺に凭れたままのカオルが、とろん、とした目をして見あげたまま、そう言う。

「ああ・・」

「傍にいるだけなんだけど・・ ね、それでもいい?」

「カオルの好きにすればいい。
 今夜、飲ませたのは俺だからな。
 ほら、それだけ飲み終わったら本当に終わりにしろ」

「はぁ~い、ごちそうさまでした。
 じゃ、寝るね、鋼牙」

笑顔でそう言いグラスをテーブルの上に置いて、ふらついた足取りで俺のベッドに歩いて行くと、さっさともぐりこもうとしている。
どうやら、俺が思った以上に酔ってるみたいだ。
はぁ――・・
ため息を吐きながらベッドに行き、灯りを消して俺もまたベッドにもぐりこむ。
すると、俺が腕をまわそうとする前にカオルがすぐにすり寄ってくる。

「ん~ 鋼牙の匂い~ いいにお~い」

まったく・・・

「カオル、お前、今何か欲しいモノ、あるか?」

「欲しいモノ~? 今は別に何も無いよぉ~ 
 あ、でもね・・」

「ん?」

「鋼牙がね・・ もっといっぱい、いっぱぁ~い?・・傍にいてくれたら・・・
 それ・・で、ねぇ・・・ い・・い・ん・・・だぁ・・・」

「そんなことがいいのか?」

「う・・ん・・・ だぁ・・ってぇ・・・
 わ・・た・し・・・が・ほ・・し・い・・・の・・は・・・
 こ・う・・・が・・・・と・・・・・の・・・・・」

俺が、お前の、傍にいる?
カオル・・ そんな、普通のこと・・ なのか?

俺の服を摘んだまま、胸元に額を押し当てて寝息を立て始めたカオルをしばらく見ていたが、優しく抱き寄せると、俺もまた静かに目を閉じた。


ホワイトデーの14日、昼を少し過ぎて朝の浄化の仕事から帰って来ると、零が来ていて、リビングのソファーでカオルと一緒に話をしていた。

「鋼牙、おかえり」

「よっ 鋼牙、お疲れさん、昼飯前から来てるぜ」

「ただいま、カオル。
 ああ、零、よく来たな」

「ささ、鋼牙様もお戻りになりましたので、皆様、ダイニングの方へ。
 昼食の用意が出来ております」


ダイニングに行くと、食欲をそそるいい匂いがしている。

「うお~ 美味そう! ゴンザさん、生姜焼きだよね」

「はい、昨日お肉屋さんに行きましたら、黒豚を勧められまして。
 零様もお越しになるのがわかっていましたので、生姜焼きにいたしました。
 カオル様、すいませんがご飯をお願いできますか?
 私はお汁の方をお持ちしますので」

「は~い、わかりました。
 じゃ、鋼牙も零君も座って待っててね」

「ああ」

「オッケ~ う~ん、ほんと美味そう」

ゴンザが作った昼飯はいつもながら美味い。
零が来たらいつもそうなってしまうんだが、ご多分にもれず今日も賑やかな昼食になった。

そして昼食後、リビングのソファーに移って、コーヒーを飲んでいたんだが。

「カオルちゃん、はい、これ」

零がおもむろにポケットからリボンの付いた長方形の小さな包みを取りだし、カオルに差し出した。

「え? なに、零君」

「カオルちゃん、バレンタインにチョコ作って俺にくれたじゃない?
 だから、ホワイトデーのお返しだよ」

「え、そうなの? 
 ありがとう、零君、今開けてもいい?」

「どうぞ。
 カオルちゃん、絶対に気にいると思うんだよね~」

「え、なんだろう・・・」

艶消しの、渋い鈍色の包み紙に包まれ、ピンクのリボンがかけられた小さな長方形の箱。
それをカオルがゆっくりとリボンを紐とき、紙を外すと、膝の上には、ビロード生地の濃紫色のケースが残った。
いくら世間のことに疎い俺でもわかる。
この箱には・・・

「零君、これって・・・」

「いいから、開けてみて、カオルちゃん」

「うん」

カオルは俺の顔を見て、俺が頷くと、そっと蓋を開け、そして中を見つめる。

「うわぁ~ 可愛い。
 それに・・・きれ~い」

「カオル?」

「鋼牙、見て、シルバーのペンダントだよ。
 ほらこれ、ハート形・・ ステキだよね?」

そう言いながら、箱から取り出しチェーンを持って、嬉しそうに自分の目の前に翳している。
シルバーのハート形のペンダント・・・

「なぁ、鋼牙」

「なんだ」

「こんなこと、たぶんもう無いからさ、それ、そのペンダント、
 俺がカオルちゃんに着けてあげてもいいか?」

零がカオルに贈ったモノを見て、そう訊かれて、正直俺の気分は複雑だった。
が、視線を合わせた零の目は、普段通り穏やかなままで・・・
だから。

「・・・ああ。
 カオル、せっかくの零からのプレゼントだ、着けてもらえ」

「うん・・・ 鋼牙、ありがと」

「カオルちゃん、それ持ってこっち来て」

「うん」

カオルが零の椅子の横に行くと、立ち上がってペンダントを受け取った零がカオルの後ろに立つ。
零に言われて今日は素直におろしていた髪を両手で持ちあげたカオルの首に腕をまわし、後ろで少し屈み金具を止めている。

ん? 零?

着け終わった零が姿勢を戻し、廻り込んで着けたカオルを正面から見て微笑んでいる。

「よかった。
 似合ってるし、チェーンの長さもちょうど良かったみたいだ」

「うん、ぴったりだよ、ありがとう、零君」

「どういたしまして」

俺の隣の場所に戻ってきて座り、嬉しそうにしているカオル。

「鋼牙、どお?」

「良く似合ってる」

「そう? 
 零君に貰ったけど、鋼牙にそう言ってもらえるの、嬉しい。
 あ、そうだ、ちょっとゴンザさんにも見せてくるね」

「ああ」

キッチンにいるゴンザに見せるため、カオルが部屋を出て行った。

「なあ、鋼牙のカオルちゃんなのに、アクセサリーなんか贈って悪かったな」

「いや、カオルも気に入って喜んでいたようだし、
 お前に変な下心なんてないのは、俺もよくわかっているからな。
 それに、この前は頑張って食べてくれた、それだけでありがたかった。
 すまなかったな、零」

「鋼牙・・
 さてと、ゴンザさんの美味い昼ごはんも食べたし、
 今日のメイン、カオルちゃんにホワイトデーのお返しも渡したし。
 じゃ、俺、そろそろ帰るわ」

「そうか、なら送ろう」

「サンキュ」

零を送るため、玄関に向かって並んで廊下を歩いていると、パタパタという足音と一緒に後ろからカオルの呼ぶ声がした。

「零く~ん!」

振り返った俺と零のところに駆けてきて、そのまま、俺の目の前で零の手を取って・・・

「零君、ありがと。
 わたし・・ これ、ずっとずっと大事にするね」

「そ? よかった。
 そんなに喜んでくれて、俺、今回、頑張った甲斐があったよ。
 でもね、カオルちゃん、そろそろ手を離してくれる? 
 ほら見て、なんだか鋼牙が固まってる。
 鋼牙、じゃあな。
 お前もカオルちゃんになんか渡すんだぞ~」

そう言って、茫然としている俺と、にこにこ顔のカオルにひらひらと手を振りながら、そのまま帰って行った。

「鋼牙?」

「あ、ああ・・」

嬉しそうに歩いているカオルの後ろをついて歩きながら、今のカオルはなんだったのか考えてみたが、何もわかるはずもなく・・・
零、お前、カオルにいったい何をしたんだ?


午後から、書斎に籠ってたまっていた書き物仕事をした。
昼間の零とカオルの会話が気にはなったが、無理やり頭から追い出し、仕事に没頭する。

コンコン・・・

「鋼牙、晩ご飯の用意が出来たってゴンザさんが・・」

「カオル? そうか、もうそんな時間か」

「うん、そうだよ。
 ゴンザさんがさっき言ってたけど・・
 ね、今日はもう指令書は来ないよね?」

「そうだな、日も暮れたし、たぶんもう来ないだろう。
 カオル、今夜は何か予定があるか?」

「え? 何も無いけど?」

「そうか・・・
 よし、とにかく晩飯を食べようか」

「うん」

ダイニングに行き、晩ご飯を食べ、指令書も来なかったから、その後風呂に順番に入る。
そして、数少ない、二人とも何も無い夜の過ごし方。
ゴンザが用意してくれた夜食を持ってカオルの待つ俺の部屋へ・・・

「カオル、待たせたな」

「あ、鋼牙・・」

どうやら待つ間、ソファーに座って以前見せてくれた絵本の資料を読んでいたらしい。

「また絵本の資料を読んでいたのか?」

「え? だって~ 子供が読む絵本の挿絵なんだもの~
 何度も何度も繰り返し読みこんでイメージを膨らませないと。
 そんな簡単にはちっちゃい子がわくわくして喜んでくれるような絵なんて、
 なかなか思い浮かばないんだからね」

少し口をとがらせて、でも笑いながらそう答えるカオル。

「そうか、そうだな・・
 でも、今夜はもうやめないか?
 そうしないと俺の・・」

「鋼牙の? なんなの?」

隣に座った俺が言いかけたことばに、首をかしげながら不思議そうな顔をするカオルの胸元には、零に貰ったペンダントが・・・

「俺の・・・
 いや、俺も・・・ か。
 カオルには甘いバレンタインデーのプレゼントを貰ったからな。
 ホワイトデーに何か返そう、そう思ってずっと考えてはみたんだが」

「うん・・」

「零と違って、俺は戦うことしか能の無いつまらん男だからな。
 結局気の利いたプレゼントなんて何も思いつかなかった」

「鋼牙・・」

「だから、今夜ひと晩の時間をお前に。
 なんでもいい、カオルのしたいことに付き合う。
 何か、したいことがあるか?
 絵のモデルでも、少し遅くなったが、去年みたいに夜の街に出掛けてもいい。
 カオル・・ どうしたい?
 それとも、零みたいに何かモノが欲しいと言うなら別の日に・・」

「鋼牙、モノなんかじゃなくていい。
 こうして傍にいてくれて、鋼牙を近くに感じていられれば、
 それだけで、わたし。
 もしかして・・・
 鋼牙、零君がくれたこのペンダント、やっぱり気になるの?」

「・・・まったく気にならない、そう言えば、嘘になるだろうな。
 だが、零に変な気があるわけないのは俺が誰よりも知ってる。
 だから、大丈夫だ」

「零君、お昼にこれを着けてくれたでしょ?」

「ああ」

「その時ね、金具を止めながら後ろで、ちっちゃい声で言われたの」

「・・・?・・・」

ああ、あの時か。

「 ”あとで、一人の時、ペンダントを開けて中を見てごらん。
 カオルちゃんのために俺、頑張ったから” って。
 それで、ゴンザさんに見せに行った時、開けて見てみたの。
 これ、鋼牙にも見せてあげるね」

そう言って、金具を外してペンダントを俺の目の前に差し出した。

「ハートのところがロケットになってるから、開けて見て」

「・・・・・」

手に取り、言われた通り蓋を開けてみた。
中には・・・
カオルの誕生日に二人で並んだところを零が撮った写真が小さくして埋め込まれていた。

「写真、誕生日の時の・・ 鋼牙、わかる?」

「ああ、カオルの部屋の白い写真立てに入っているやつだな」

「うん、そう。
 でね、反対のほう、ちっちゃ~く字が彫ってあるの。
 鋼牙、読んでみて」

「・・・字?・・・」

なんだ? 何と彫ってある?

「Are together much」

「鋼牙なら、意味、わかるよね?」

「ずっと一緒に・・・」

「そう。
 鋼牙とわたし、ずっと一緒に、って。
 それで、零君帰る時、嬉しくて嬉しくて、走って行ってお礼を言ったの」

そう、だったのか・・・

「・・・ふっ・・・」

「鋼牙?」

「悔しいな・・」

「え?」

「俺にはこんな気の利いたプレゼント、思いつきもしない」

「・・・鋼牙」

「俺には・」

「だから、いいの! いいんだってば!
 零君は零君、鋼牙は鋼牙。
 鋼牙がね、ケガひとつしないでこうしてわたしの傍にずっといてくれる。
 それがわたしにとって、なにより1番の、最高のプレゼントなんだから!
 零君はそれがよ~くわかってるから・・・
 だから、このペンダントをくれたんだと思うの。
 鋼牙とわたし、仕事で離れてたり、忙しくてすれ違ったりしても、
 わたしがこれ見て元気が出るように、心が挫けたりしないように、
 2人の心が繋がってること、絶対に忘れないように。
 ね、そうだよね、鋼牙」

手の中のペンダントの写真と文字をもう一度見て・・・
蓋を閉じ、黙ったままカオルの首に手をまわして着けてやる。
そうして、首の後ろに廻した手をそのまま背中にずらして抱き寄せ、目元に口付けて・・・
カオルの肩に顔を埋めるようにして訊いてみる。

「カオル、今夜・・ 俺はお前のためにどうすればいい?」

「鋼牙・・・
 ずっと一緒にいて欲しい・・かな」

「わかった、傍にいる」

「歌・・ 鋼牙が歌うの、すごく好きなの。
 歌ってくれる?」

「ああ、カオルの要望のままに。
 他には?」

「鋼牙、いつもわたしには優しいけど。
 でも、もっと・・ 今夜はもっとやさしく・・・して?」

「もっと、か?  ・・・わかった。  
 他にはもう、ないか?」

「え~~ そんな急に言われても・・・」

俺の胸に顔を押し当て、背中に廻していた手にギュッと力を入れる。

「もうこれ以上思いつかないから、あとは鋼牙のお勧めコースでいい!」

「お勧めコース?」

「だって、急に言われたって思いつかないよ。
 わたしはいつものように鋼牙と一緒にいるだけで、ほんと十分なんだから。
 後は・・ その・・ お任せする!
 鋼牙が楽しくて嬉しいなら、わたしも楽しいし嬉しいもん」

カオル・・・

廻していた手を外し、身体を少し離してカオルの顔を見つめる。

「・・・・・」

「鋼牙・・ ダメ?」

「いや。
 じゃあ、お茶を飲んだら、お前のリクエストの歌を歌おうか。
 それから・・」

「それから?」

俺は、小首をかしげるカオルの頬に軽くキスをして、唇を這わしたまま、小さく掠れた声で囁いた。

「夜はまだ長い、俺のお勧めコース、楽しみにしていろ・・」



コメント
なんと、ハートのペンダント、読まれてましたか~ (笑)
うんうん、そうですよね、そうでした。
プレゼントって、たしかに、物を贈るんだけど、ほんとは物じゃなくて、心を贈るものですよね。
贈る相手を想い、喜ぶ顔を想像して、自分の心を、選んで買ったり作ったりした物に想いのたけを込めて、贈る。
うふふ・・ りのんさんのおかげで、なんだか、若かった頃を思い出しました。
【2012/04/20 23:22】 | なな #- | [edit]
鋼牙の ”お勧めコース” は、本当に今のところ(一応ね)予定はありませんです。
まだまだリクエストも残ってますし、そろそろドッキリ番の方も出そうですしね。
零君、またなにかしら登場すると思いますので、楽しみにしていてくださいませ。
では、またのお越しを楽しみにしています。

【2012/04/14 18:59】 | なな #- | [edit]
は? 一二三様、今、なんと?
え? みっちりフルコース? でございますか?
も、申し訳ございません。
手前どもには今、そのような準備もなく・・・
なんてね。 (^_^)
ほんと、なぁ~んにも、考えていないんですよ、今は。
う~ん、書きたいのはやまやまですけど、やりたいことも、やらなきゃいけないことも山積みな今の状況だと、今すぐは無理っぽいでしょう?
それでも、今までみたいに急にやる気になって、じゃじゃ~ん❤ と、突然出来あがったりしたら・・・
その時は、定期メールにおまけでくっつけて、こっそりとお送りします。 (苦笑)
でも、気分次第、体調次第、時間次第なので、あまりあてにしないでね~ です。
【2012/04/14 16:48】 | なな #- | [edit]
リクエストはあったものの、結局上手く思いつかず、途中からニュアンスを変え、踏ん切りをつけて、やっと零君のプレゼントの小物を決めて、そこからは、一気に書き上げました。
作文の題名後の日付、(私の場合、とりあえずブログサイトに枠を取った時の最初の日付、もしくは書き始めた日付です) それを見てもらえればわかりますが、このおはなし、最初にざ~っと一度書いていたのは、かなり前なんです。
でも、最初の小物がどうしても気に入らなくて、今回のペンダントを決めるまで、ず~っと保留にしていました。
せっかく頂いたリクエストですから、どうにかしたい、意に沿いたい、そう思います。
まあ、文才なんてとんでもない素人作文なので、頑張ってもたいした物は書けません。
それでも、ほんのちょっぴりでも、たった一人でも、読んで喜んだり、楽しんでもらえたなら、こんな嬉しいこと、ありません。
今回は、リクエスト、どうもありがとうございました。

【2012/04/14 16:35】 | なな #- | [edit]
いつもながら、優しいコメントをどうもありがとうございます。
零君ねぇ~ すごい優しいでしょう?
私の中では、登場人物の中ではダントツに優しくて、周りの雰囲気読める気配り君なんですよ。 (*^_^*)
ほんとは今すぐにでも幸せになってもらいたいし、したいんですけど、勝手にそうするわけにもいかないし~~ なんですよね。
鋼牙とカオルのその後ですが・・ ママ様予想は、むふふ♪ ですか・・・ 
あはは・・ ま、いかようにも、ご想像にお任せしますので、しっかりとお楽しみくださいませ。 (^o^)丿
【2012/04/14 16:15】 | なな #- | [edit]
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