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It tells ~ 伝える ~

category: 作文1  

あの、初めて二人共に過ごした夜から、数日後、いまだゴンザとザルバにカオルとのことを伝えられない鋼牙は・・・
そろそろ、黙っていられるのも限界のような?



 
     ・・・ It tells ・・・
                           <10.19.2011>

あの、土曜の夜から、数日・・・

ゴンザが帰ってきた日曜の夜から、俺には続けて ”指令書” が来たり、カオルは、昨日から絵の展示会のために一泊の泊まりがけで出掛けていたりで、なぜだか、周りが急に慌ただしいことになっている。
おかげで、すぐに伝えるつもりでいたカオルとのことを、完全にきっかけを失ったまま、ザルバにも・・ そして、一番に伝えるべきはずのゴンザにさえも言えないままになってしまっている。
言葉にすれば、たぶん一行。
だが、伝えるべき内容が内容なだけに、さすがにどう言おうか、いつ言おうか、そう考えているうちに、ついついきっかけを失い、いつの間にか今に至っている、という状況だった。

ともかく、ゴンザにだけは誰よりも一番に、きちんと言わなければ。
昼から、書斎で書きものの仕事をしながら、それだけをずっと考えていた。
今夜、最終に近い電車でカオルが帰って来る。
カオルがいるところで話を切りだすのは、恥ずかしがるだろうから、できるなら避けてやりたい。
ということは、これからゴンザが昼のお茶を持ってきてくれた時に、俺からきちんとひとこと言っておくのがいいということだろう。

コンコン・・・

「鋼牙様、失礼いたします。
 お茶をお持ちしたのですが、よろしいですか?」

「あ、ああ、頼む」

机の上の書類を少し端に寄せると、ゴンザが紅茶を淹れたカップをそこに置いてくれる。

「ゴンザ、実は話があるんだが・・・」

「鋼牙様、カオル様は、今夜はお夕食は食べてからお戻りでございますね?」

「は? 晩飯? そういえば、なにかそんなこと、昨日の朝、出掛ける時に言っていたな」

「それで、お二人でお食べになる明日のお夕食のことなんですが・・」

「明日の晩飯がどうかしたのか?」

「お赤飯、でもよろしいでしょうか?」

「ああ、俺はべつになんでも・・・ 
 ゴンザ、それは・・」

ゴンザの言ったことばの意味に気付き、思わず、慌ててしまう。

「鋼牙様、もし、私にカオル様との事を隠しておきたかったのでしたら、
 ゴミはきちんとお捨てになるべきでしたね。
 ゴミ箱に、あのようなモノを・・・
 いくら不透明なゴミ袋に入れてあるといいましても、放り投げられておりますと、
 執事の私としましては、中が何なのかを一応確認せざるをえません。
 ですから・・」

「すまない、ゴンザ。
 俺は、別に隠すつもりは無かったし、お前が帰って来た夜、すぐに言うつもりだったんだ。
 だが、指令書やらなにやら、いろいろと重なって、それで言いそびれて。 
 言い訳のように聞こえるかもしれないが、今、ちょうどどう言おうかと・・
 いや、すまない、本当にすまなかった」

「鋼牙様、よろしいのですよ、わかっております。
 鋼牙様が私に隠し事をされるなど、今まで一度もありませんでしたし。
 それでは、明日のお夕食は、お赤飯でよろしいですか?」

「俺は別にいいが、カオルは・・・ 
 たぶん、用意された意味がわかった時、すごく恥ずかしがるだろうな」

「いいえ、カオル様は恥ずかしがるでしょうが、お祝い事ですよ、鋼牙様。
 私は、執事という立場ではございますが、
 鋼牙様とカオル様とは、家族以上の間柄だと思っております。
 ですから、鋼牙様とカオル様がおめでたい関係に進まれたのであれば、
 是非、お祝いさせていただきたいのです」

「ゴンザ・・」

「鋼牙様、よろしゅうございましたね」

「ああ」

「さあ、お茶をどうぞ、冷めてしまいますよ」

「・・・ゴンザ」

「はい、なんでございましょう、鋼牙様」

椅子から、立ち上がり、ゴンザに正対して頭を下げる。

「これからも、俺とカオルのこと、よろしく頼む」

「鋼牙様・・・ そんな、とんでもございません。
 どうか、頭をお上げください。
 私は、冴島家の執事でございます。
 鋼牙様とカオル様のことは、これからも家族以上に、
 出来る限りお世話させていただきます。
 ですから、そのようなこと、二度となさいませぬように。
 では、失礼いたします」

ゴンザは、とても嬉しそうに、目を細めて微笑みながら、部屋を出て行った。

ゴンザ、ありがとう。

椅子に座り、カップを口に運びながら、目の前の机の上の箱の中にいる、伝えるべき ”もう一人” に、どう伝えればいいのか、考える。

ザルバには、どう言って伝えるか・・
ゴンザに言って、ザルバに言わない、というわけにもいかないからな。
そう考えながら、箱の中から、台座ごとザルバを取り出し、箱の上に置く。

『どうした? 鋼牙。
 まさか、もう ”司令書” でも来たか?』

「いや、そんなことじゃない」

『違うのか?
 じゃあ、なんでまたこんな時間に俺を?』

「ああ、少しお前に話しておきたいことがあってな」

『俺に話?  
 おいおい、いったいまた、なんの話なんだ?』

「いや、カオルのことなんだが・・」

『カオルがまた、いつぞやのように、出掛けた先で何かやらかしたのか?
 そういや、今行ってるのも、いつぞやのあの場所だったな』

「いや、今日カオルが何かしたという訳ではなくてだな・・」

『鋼牙~ もしかしてお前、この前の夜、本当にカオルと何かあったのか?』

「う・・・ まあ、そういうことだな」

『ふ~~~ん  ・・・で?』

「で? って・・・ だからだな・」

『やっとカオルとうまくいったんだろう? なら、それでいいじゃないか』

「まあ、そうなんだが・・・」

『おい、鋼牙、お前まさかとは思うが、この俺様に ”おめでとう” とか、
 そんな言葉を言ってもらいたい、な~んてことを言うんじゃあないだろうな?』

「いや、そんなことは言わない。
 ただ、お前に黙ったまま、というのは、いけない気がした。
 それだけだ」

『・・・それにしても・・』

「・・?・・」

『結局あの日、俺様の言うとおりになったってわけだ』

「まあ・・・ 結果、そういう事になるな」

『・・・鋼牙』

「なんだ」

『よかったな・・・ 願いが叶って』

「・・・ああ」

『お前だから心配いらないとは思うが、カオルのこと、大事にしてやれよ』

「ああ」

『なにかと面倒で手間のかかる奴だけどな~』

「そんなこと、お前に言われなくても、百も承知だ」

『それもそうだな。
 もういい。
 鋼牙、俺からはもう、これ以上、何も言う事はない』

言うべき事も言い終わって、箱の中に戻し蓋を閉めようとした、その時。

『おい、鋼牙』

「なんだ」

『まだまだこれからいろんなこともあるだろうがな・・
 お前がカオルを幸せにするだけじゃあなくて、お前自身も幸せになれよ』

一瞬、箱の中のザルバを見つめる。

「・・・ああ、そうする」

口元だけで笑って答え、箱の蓋を閉める。

ザルバ・・・

ペンを手に取り、仕事を再開する。
ゴンザとザルバにやっとカオルとのことを伝えられて、胸につかえていたものが取れてすっきりした俺は、ゴンザが晩飯の用意が出来たと呼びに来るまで、目の前の仕事に没頭した。

2012_03_03

Comments

ママ様、こんにちは、です 

カキコしている時は、頭の中に浮かんだことを、透明人間になったつもりで見てる感じなので、さほど深く考えずやってるんですけど・・・
そう言われてみたら、かな~り恥ずかしいこと満載でしたよ、このおはなし。
でも、気付くの超遅すぎ!
後悔先に立たず、でした。
ひゅるる~~~ 
今頃頭の中を風が吹いてますぅ。 (ToT)/~~~
なな  URL   2012-03-04 11:22  

一二三様、どうも失礼いたしました 

そ、そ、そんな・・・ 一二三さんがそんな・・・
ぅう・・・ 私、なんだか、とんでもカキコをしたような気にすご~くなってきました。
<(_ _)>
なな  URL   2012-03-04 11:15  

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GAROと彼の人をこよなく愛しつつ、のんびりまったりと想像妄想した作文をUPしています。

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