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In KYOTO ~京都にて~

Category: 作文1  

カオルの誕生日から、数日後・・・
半年前に展覧会の打ち合わせに行った思い出深い京都へ、今度は展覧会のために招待されてカオルはまた京都を訪れます。
京都でのカオルの様子を少しだけ、覗いてみましょうか。

以前、京都に行った時のおはなしは、ここをクリック 「カオル災難に遭う」 
以前、京都から帰ったあとのおはなしは、ここをクリック 「迎えに行ったその後で」



 
     ・・・ In KYOTO ・・・
                       <10.6.2011>

プシューー・・・
新幹線のドアが開いて、スーツケースを転がしながら、構内を抜け、改札を通り、駅の外へ出る。
駅前のタクシー乗り場から、タクシーに乗ると、行き先である、主催者さんが用意してくれているホテルの名前を告げる。
今日は、明日から始まる展示会のために、半年振りに、再び京都にやって来た。

窓から見える、商店街のアーケード。

あの、人の多い駅までの道を、迎えに来てくれた鋼牙に腕を引っ張られながら、歩いたっけ・・・

ひったくりに遭った翌日、思いもよらぬ鋼牙が迎えに来てくれた驚きと、嬉しさと、腕を掴まれて早足で歩いた感覚は、まるで昨日の事のように覚えているのに、もう、あれから半年も過ぎたんだという事に、改めて時の過ぎる早さに驚いてしまう。
タクシーの窓から、多くの観光客が歩く歩道を見ながら、自分と鋼牙の歩いた姿を思い出し、人の流れの中に、思わず半年前の自分たちの姿を投影してしまう。

ほんと、あの時は嬉しかったな。

ふっと、口元に笑みが浮かぶ。

「お客さん、お一人で観光ですか?」

「は? あ、いえ、仕事です。
 ゆっくりといろいろ見て歩きたいんですけど、明日の夜にはもう帰らなければいけなくて」

「それは、残念ですなぁ。
 ここは、見るところも、食べるところもいいところがいっぱいあるんですがねえ・・・」

「そうですね・・・」

考え事をしていると思ったのか、窓の外をぼんやりと眺めているわたしに、それきり運転手さんは無理に話しかけてはこなかった。

ホテルに着くと、フロントに行き、主催者から預かったという、伝言の手紙を渡されて、部屋まで案内される。
まだ、数時間はあるけど、今夜は、明日からの展示会のためのレセプションがこのホテルで開かれるから、少し休憩をしたら、シャワーを浴びて、準備をしなくてはいけない。
髪をセットして、お化粧して、きちんとした服を着て・・・
普段、あまり、そういうきちんとした場所に行くことがないから、苦手だし、少し緊張もするけど。
でも、今回は、油彩だけではなくて、水彩や、墨彩画なんかのいろんな分野の若手の画家のための展覧会だから、出席者の人と話をすれば、たぶん自分のためになることが少なからずあると思う。



今朝は、鋼牙の起きる時間に起してもらって、朝ごはんを一緒に食べて、ゴンザさんに駅まで送ってもらった。

「では、カオル様、くれぐれもお気をつけて」

そう言って、笑顔で送ってくれたゴンザさん。
ほんとに、ゴンザさんには、いつもお世話になってばかりだなぁ。
明日帰る時には、ゴンザさんの好きな八ッ橋を、忘れずに買って帰らないと。
そうそう、前買って帰ったら、すごく喜んでたから、今度はもうちょっと大きい箱を買って帰らなきゃあね。

もうすぐ3時か~ 
鋼牙、今頃、ゴンザさんの淹れてくれたお茶、飲んでるんだろうなぁ~

ベッドに腰掛けて、トランクから出して吊るした服や、テーブルの上に並べた小物を眺めながら、昨夜から、今朝のことを思い出す。



「おい、カオル、明日は朝、早いんだろう、そろそろ風呂入って寝ろよ。
 ・・・?!・・・
 おい、まさか、お前・・・ まだ荷物してなかったのか?」

風呂上がりの鋼牙がお風呂に入るよう言いに来てくれたんだけど・・・

「だって、今日締め切りの仕事、ほんとは持って行くだけだったのに、
 持って行ったら、いろいろあって夕方までかかっちゃったんだもん。
 あ、鋼牙、いいところに来た。
 ねえ、こっちとこっち、どっちがいいかな~?」

「どっちって、なんだ、その服?」

「明日の夜に、関係者だけのミニ・パーティっていうか、
 レセプションみたいのがあって、どっちを着ようかなって迷ってて。
 ねえ、鋼牙、どっちがいい? 
 どっちが似合うと思う?
 明後日の展示会場は、スーツだから決めてるんだけど、
 こういうのはね、滅多に着ないから迷っちゃって・・・」

「・・・・・」

「ねえ、どっち?」

「きちんとした席なんだろう?
 ピンクのもいいが、こっちのシルバーグレーと黒の方がいいんじゃないのか?
 しっかりした大人の女性に見えて、俺はいいと思うが?」

「じゃ、こっちにする。
 え~~と、髪留めは、これで、靴はこれで、バッグはこれ。
 ネックレスはこれで、あと化粧品が・・・」

「カオル、その服にネックレスって、金鎖のそれか?」

「うん、こんなのしか持ってないんだけど、ダメかな?」

「ダメじゃあないが・・・ ちょっと待ってろ」

部屋を出て一階に降りて行った鋼牙が、しばらくすると、ゴンザさんと一緒に戻って来た。

「カオル様、ドレスを着るそうですが?」

「え? ドレスっていうほどの感じじゃあなくて、少しフォーマルっていうぐらいかな?
 これなんですけど・・・」

「どうだ? ゴンザ、どう思う?」

「そうでございますね・・・
 やはり、鋼牙様のおっしゃるとおり、こちらを合わせた方がよろしいかと思います」

「そうか。
 カオル、ほら、これを使え。
 ネックレス、イヤリング、指輪、全部セットで入ってる」

そう言って、鋼牙が黒革のケースをわたしに差し出す。
受け取って、蓋を開けてみると・・・
中には、少しゴールドっぽい色の大粒の真珠の三点セットが中に入っていた。

「これ、真珠・・・ すごく大きい・・・ 綺麗・・・」

「それは、鋼牙様のお父様の大河様が、奥様のりん様に贈られたものでございます」

「え、でも、そんな大事なもの・・・」

「気にするな。
 引き出しの中にしまったままよりも、使ってやった方がいいだろう?」

「でも・・・」

「カオル様、鋼牙様も、ああ、おっしゃってるんですから」

「鋼牙、ほんとに、いいの?  お母さんの形見なんでしょ?」

「だから、箪笥の肥しにせずに、有効に使え、と言ってるだろう?
 俺は男だから、そんなモノ使うこともないしな。
 それに、俺もゴンザも、展覧会を見には行けそうにないし、
 こんなことぐらいしか、お前にしてやれない」

「鋼牙・・・」

「鋼牙様、カオル様、それでは私はこれで・・・」

にっこり笑いながら頷くと、ゴンザさんは部屋から出て行った。

「ありがと、鋼牙、ありがたく借りるね。
 でも、すっごい綺麗~  
 わたしなんかが着けて、似合うかなぁ~?
 なんだか、みんな、わたしじゃあなくて、このネックレスだけ見そうな気がするな~~」

「・・・そんなことないさ」

「え?」

「い、いや、なんでもない。
 それよりも、服も決まったのなら、
 さっさと荷物をして、風呂に入って、早く寝ろ。
 お前は早く起きるの、得意じゃないんだから。
 寝坊したって、俺は知らないからな」

「うふふ、そこは、大・丈・夫。
 目覚ましも掛けるけど、一応、保険にね、
 ゴンザさんに、もし起きてこなかったら、
 起こしてもらえるように頼んであるから」

「なんで、ゴンザに頼むんだ?」

「え? だって、鋼牙・・・
 じゃあ明日、鋼牙が起こしてくれるの?」

「お前がどうしてもと言うなら、起こさないでもないが・・」

「ほんと?
 じゃ、お願い、鋼牙が起こして。 
 ね」

「う・・  わかった。
 そのかわり、駄賃はもらうからな」

「え? 駄賃って?」

「さあな。
 じゃあ、俺はまだ書斎でもう少し仕事があるから。
 おやすみ、早く風呂入って、寝ろよ」

「うん、おやすみ、鋼牙」

それから、荷物を詰め終えて、お風呂に入ったら、昨夜はすぐに寝たんだけど・・・


今朝。
んん~~~?
なんだか息苦しくて、急に意識が浮上して、目を開けたら、それこそ目の前に度アップで鋼牙の顔が。
ぇえ~~!
名前を呼ぼうとしたら、そこで初めて鼻をつままれていることに気がついて、慌てるわたしに、至近距離の鋼牙の口から・・・

「おはよう、カオル。
 お前の目覚ましより、俺の起きる方が少しだけ早かったみたいだな。
 どうやら、目覚ましが鳴るはずの時間まではまだ20分ほどあるみたいだし・・・
 起こしてやったんだから、約束通り、駄賃を貰うぞ」

「え? 駄賃て?」

「お前が家に居ない2日分、お前流に言えば、
 俺の中のカオルが不足しないように、
 抱きしめて、キス、させてもらう」

「鋼牙・・・」

「ほら、時間が惜しい、目を閉じろ」

ベッドの縁に腰掛けて、左手を耳の下に差し込まれ、右手で額から髪を梳き流しながら、間近で目を細め、少し掠れた声でそう囁かれて・・・
わたしは、返事の代わりに、言われたとおり、目を閉じた。
鋼牙は、駄賃だなんて言うけど・・・ 
でも、鋼牙がわたしにしてくれるキスは・・・  
自分のためじゃあなくて、いつでも、わたしを気持ちよくしてくれる、甘くて、優しい、まるでわたしのことをいつも思いやってくれてる鋼牙そのもののようなキスで・・・
いつも鋼牙にされる度そうなってしまうように、わたしはすぐに、大好きな鋼牙の匂いに包まれて、与えられる心地よい波に攫われ、快感の海に漂わされてしまう。

・・・ん・んんーーー・・・・・ はぁぁ~・・ っん・ぅん・・んーーー・・・
・・ハァ・・ カ・・オ・ル・・・ん・んーーー・・・

鼻から抜ける、わたしの、甘さに酔った喘ぎ声と・・・
鋼牙が息次の度に洩らす熱い吐息や、唇の間から零れる、わたしの名前を呼ぶ、とぎれ、とぎれの、声・・・
それと・・ お互いの唇や舌が触れあい、絡まり合う隠避な水音・・・

・・も・・・う・・だめ・・・頭の中が・・・霞んじゃう・・・・

最初、鋼牙の黒スーツの背中にしがみつくように廻していたはずのわたしの腕は、いつのまにか力が抜け、今ではもう、ただ、乗っかっているだけになっている。

ハァァーー・・・
ゆっくりと顔を離した鋼牙に、わたしの肩口に顔を埋められ、大きく熱い吐息を吐きながら、ギュッと抱きしめられて・・・ 
そのまま、耳元に話しかけられる。

「カオル・・・」

「・・・うん?  なあに?」

「今度は・・・ 道に迷ってひったくりなんかに遭うなよ」

「・・・鋼牙!」

「俺もそうそう、迎えにばかり、行けないからな」

顔を上げて、いたずらっぽい目をして、そう言われる。

「もぉ――! すごくいい雰囲気だったのに~~ 
 なんで今そんなこと言うのよ~」

「お前は同じミスを繰り返しそうな気がするからな。 
 それと・・ そろそろ、起きる時間だ。
 とりあえずだが、俺の中のカオルは、2日分は充填できたみたいだ。
 これ以上充填しようとすると、俺は暴走しかねないし、
 そうすると、お前は遅刻する事になると思うが・・・
 カオルは、それでもいいのか?」

「・・・全然よくない」

「だろう?  ほら、起きるぞ」

口を尖らして少し不満顔のわたしを、手を廻して起してくれた、と思ったら、鋼牙ってばその尖らせた唇に、ちゅっ と、軽くキスをしてから立ち上がった。

「カオル、そんな顔はやめろ。
 せっかくの顔が、可愛くなくなる。
 俺は先に下りるが、このスーツケース、持って下りておけばいいのか?」

「う、うん、ありがと」

「早く下りてこないと、先に朝飯、食べ始めるからな」

「え~ 鋼牙、すぐ下りるから、待ってて~」

「さあな」

急に慌て始めたわたしを、面白そうに口元だけで笑いながら、スーツケースを持って、先に下りて行った。


朝ごはんを一緒に食べた後、家を出たのは鋼牙が先。

「いってらっしゃいませ、鋼牙様」

「鋼牙、いってらっしゃい」

「ああ、いってくる。
 カオル・・・」

「大丈夫、心配しないで。
 今回は、駅とホテルと会場だけで、遊ぶ暇なんか無いし、
 それにたぶん、全部タクシーだから」

「じゃあ、安心だな」

ホッとしたように、それだけ言うと、向きを変えて、もう振り返らずにさっさと歩いて出掛けて行った。
いつものように・・・



「鋼牙・・・  
 鋼牙って、本当に毎日、一日も休まず頑張ってるんだもんね。
 よし! シャワーを浴びて、準備をしよう! 
 わたしも、自分のことを頑張ろう!」

ベッドから立ち上がり、まずはシャワーを浴びるための準備を始める。



夜のレセプションは、思ったよりも賑やかだった。
同じような年頃の、「絵」 といっても、表現方法や手法の違う人たちと話をすることは、とても勉強になることも多くて、この人達と知り合えただけでも、この展示会に参加できたことは、自分にとって、とてもためになるものだと思えて、とても有意義な時間を過ごす事が出来た。
明日帰るまでは、会場に展示してある作品を観ながら、もう少し話ができるかと思うと、とても楽しみな気分になってくる。
企画と、世話をしてくれる人に連れられて、会場になるお寺のお坊さん達に挨拶に行ったら、会場を盛り上げるために呼ばれた舞妓さん達も一緒にいて、わたし、ぶしつけにもじぃーーっと見つめたまま、

「すてき・・・ 綺麗・・・」

って、目の前で思わず呟いていたら、逆に舞妓さんに、

「まあ、嬉しいわあ。 
 でも、そちらさんも、よう、似合うてはりますよ。
 服も真珠も、ほんまにお姉さんにお似合いで、素敵どすぇ」

って言われちゃった。
帰ったら、鋼牙にこんな風に言われたんだよ、って教えてあげて、でもそれって鋼牙のおかげだよ、ありがとう ってお礼を言わなきゃ。


次の日、他の参加者の人とタクシーに相乗りして、会場のお寺に行く。
境内の中に一歩入ると、前来た時にも感じたけど、ひとたび門をくぐった途端に、そこを境に街とは流れている時間の早さが違うような気がする。
別に、重いっていうのじゃあなくて、上手くは言えないけど、ゆっくり? ゆったり? 流れているっていうか、心が澄んでいって自然と落ち着いていく感じ。

靴を脱いで上がってみると、襖や障子を開け放した部屋の中に、作者ごとに作品が飾られていた。
すご~い・・・  ステキ・・・
廊下から部屋の中を見れば、イーゼルに載せられた絵の数々、振り向いて外の庭を見れば、何百年経ったのかわからないほど年月を経たしっとりとした日本庭園。
建物を覆い隠すほどに大きく育った樹木や、何年かかってああなったのかわからないような苔むした大きな石、塵ひとつ落ちていない砂の上には、波に見立てた筋が幾筋も幾筋も描かれていて・・・
前に来た時も驚いて感動したけど、何度見ても感動せずにいられない。
本当に圧巻、すごい・・・
一緒に来た他の参加者の人達も皆同じ様子で、庭やお互いの絵の事を話しながら、開始時間までの間を、有意義に過ごす。

開始時間の前になって来ると、他の人たちは、家族や友人かららしい花の差し入れが届いたりして、展示しているところに飾られている。

しかたないよね。
いくら一緒に暮してるからって言っても、そこまでは期待できないもの。

そう思って、自分の作品の展示している部屋で、静かに始まるのを待つ。

始まってみると、観光客の人に混ざって、地元の絵画好きの人達もかなりの人数が観に来てくれて、暖かい言葉をもらったり、疑問に思ったことを訊かれて答えたり、結構忙しい。

はぁ――・・ 疲れたな。

お昼前ぐらいになると、やっと少しだけ人の波が一段落して、肩の力を抜いて項垂れて、ほんとにほっと一息ついた頃、廊下の障子の向こうから、足音も無く近寄って来ていた人の足元が、俯いていたわたしの目の端に・・・

あれ? このズボンと服の裾って?

俯いていた顔を上げると、そこには見慣れた長身に黒コートを羽織った、人懐っこい零君の笑顔。

「やっほ~ カオルちゃん 来~ちゃった!  はい、これ」

「え?」

渡されたのは、零君の顔が見えなくなるくらいの、抱えきれないほど大きいピンクのバラの花束。
それも、全部同じバラじゃなくて、ピンクなんだけど、大きいのや、小さいの、薄いのに濃いの、何種類も何種類も混ざってて、不思議な感じのする大きなピンクの花束。

「零君、これ、こんなに・・・ ありがとう」

「ごめんね、カオルちゃん。
 やっと花屋さん見つけたんだけどさ、あんまし種類も数も無くてさあ~
 しかたがないから、ピンクのバラをありったけぜ~ンぶ一緒に混ぜてもらって、
 あと、カスミソウもあるだけ全部周りに飾ってもらって花束にしちゃったんだ。
 だから、なんだか、こんな変わった感じのになっちゃって」

「ううん、零君、全然変なんかじゃないよ。
 ごめんね、ちょっと、活けてもらえるように頼んでくるから待っててくれる?」

「うん、いいよ~」

お寺の人に花束を見せると、古備前だっていう大きな花瓶を準備してくれて、活けて、部屋の中心に置いてくれた。
渋い茶色の花瓶に、個性豊かな、大きさも形も色も微妙に違う、でも全部ピンク色の素敵な、まさに、バラの大きな、花の束。
中に、匂う種類のバラも入っているんだと思う。
仄かに花瓶から優しい、とてもいい匂いが漂ってくる。

「うわぁ~ 綺麗~~  零君、ほんとにありがとう。
 わたし、誰も花を贈ってくれる人なんていないと思ってたから、すごい、嬉しい」

「そ、喜んでもらえて、よかった」

「でも、零君、どうして? 
 なんで、わざわざ京都まで来てくれたの?」

「それはね、たまたま昨日さ、昼ご飯食べに鋼牙ん家に行ったんだ。
 そしたら、カオルちゃん、
 展示会で京都に行ってるってゴンザさんが教えてくれてね。
 ほんとは俺よりも鋼牙が来れたらいいんだろうけどさあ。
 鋼牙、なんか番犬所から、急に呼び出されて仕事押し付けられたらしくって、
 どうにも動きが取れないみたいなんだよね。
 カオルちゃん、誰も知り合いが行かなくて寂しい思いしてるはずだ、
 そう、ゴンザさんが言うから。
 それで、俺、空いてるんで、場所聞いてやって来たってわけ。
 ね、鋼牙じゃなくて俺でがっかりした?」

「ううん、零君、そんなことないよ、すっご~く嬉しい。
 ありがとう」

「どういたしまして。
 それよりさ、カオルちゃんの絵も観たし、そろそろお昼だよね?
 カオルちゃん、お昼御飯は?」

「え? お弁当も一応あるらしいけど、お寺の周りにいっぱいお店もあるし、
 せっかくの京都だから、お豆腐料理でも食べに行こうかな~って思ってたんだよね」

「じゃあ、俺と一緒に食べに行かない? 俺もう、腹ペコ」

「うん、いいよ。
 じゃあさ、え~っと・・・ あと15分ぐらい待っててくれる?
 一応お昼になるまではここにいることになってるの。
 時間が来たら、係の人に断わってから食べに行こうよ」

「O.K~~ 
 じゃあ、それまで、庭や他の部屋とか、もうちょっと観てくるから」

「うん、わかった」


お昼になったら、お寺のすぐそばのお店に入って、お豆腐や湯葉のセットを食べる。

「この生湯葉って、お醤油掛けただけなのにすっごい美味しいね。
 俺、これだけ、追加しちゃうけど、ねえ、カオルちゃんもいる?」

「ううん、わたしはこのセットだけで十分だよ」

「そうなの? じゃあ、俺だけか。
 すいませ~~ん、これだけ、単品で、あと2人前追加してくださ~い」

ふふ、いつもの零君だなぁ。

「カオルちゃん、ほんとにいらないの?」

「うん、ありがと、わたし、そんなにたくさん食べられないから」


ご飯を食べて、零君と話しながら、お寺の境内の中を散策していると、観光客の人だけじゃあなくて、遠足なのかな? 小学生や、幼稚園児の姿もちらほら・・・
小学生は、画用紙に写生したりしていて、歩きながら、描かれている絵を見ていると、なんだか、昔を思い出して顔が綻んでくる。

「懐かしいな~
 わたしも遠足に行って、こうやって描いてた頃があったんだよね」

「ふ~~ん、遠足って、こんなこともするんだね」

「え?  零君?」

零君の言葉に、どうしてそんなこと言うのかな、って訊こうとしたその時、急に腰のあたりに、衝撃を覚えて、よろけそうになる。

「カオルお姉ちゃん!」

あれ? この声って・・・

「は・る・ちゃん?」

「うん、ぼくだよ、こんにちは~」

「わあ、久しぶりだね、元気だった? はるちゃん」

「うん、今日な、遠足に来てるねん! 
 お姉ちゃんは?」

「わたしは、お仕事なの。 
 ごめんね、忙しくてはるちゃんのお家に寄る時間が無いんだ。
 お母さんやお父さんに寄れなくてごめんね、って言っておいてね」

「うん、わかった、言っとく。
 なあ、この真っ黒のお兄ちゃんは?
 今日は、お姉ちゃんの彼氏の、超かっこいい白い服のお兄ちゃんは?」

「あ、白い服のお兄ちゃんはね、今日はお仕事で来れないの。
 だから、白い服のお兄ちゃんのお友達の、このお兄ちゃんが、
 代わりに来てくれてるの。
 はるちゃん、このお兄ちゃんね、れ・い って言う名前なの。
 零君、この子、はるちゃんって言って、この前の・」

「ああ、あの、写メに写ってた、お子様ランチの子だよね~
 こんにちは、はるちゃん、俺、零って言うんだ」

零君はしゃがみこんで、はるちゃんの目線に合わせて、挨拶をしてくれる。

「こんにちは、零お兄ちゃん。
 お兄ちゃん、白い服のお兄ちゃんと、ほんまにお友達なん?」

「うん、そうだけど? 
 どうして、そう思うんだい?」

「えっとな、テレビやったらいっつも白い服の人と、黒い服の人は敵同士やねん!
 そやから、僕、お友達とちゃうって思ったんやけど・・・
 なぁ、ちゃうの?」

「・・・・・」
「・・・・・」

思わず零君と目を見合わせてしまう。

「うふふふ」

「あはは、なぁ~るほど、ああ、そっかぁ~~
 でも、ざ~んねん!
 はるちゃん、俺はさ、こんな黒い服着てるけどさぁ、
 悪い奴なんかじゃあないんだよ。
 内緒だけどね、俺は、これでも正義の味方なんだ」

「ほんま?」

なんだか信じられない、みたいな顔をして、こっちを向いて尋ねる、はるちゃん。

「うん、本当だよ。
 零お兄ちゃんは、白い服のお兄ちゃんのお友達で、
 内緒だけど、二人とも本物の正義の味方なんだよ。
 それも、すご~く強いんだから」

「え~ そうなん? 零お兄ちゃん、強いの?」

「うん、白い服のお兄ちゃんとおんなじくらい強いんだ」

「でも、ほんまは白い服のお兄ちゃんの方が、
 零お兄ちゃんよりちょっとだけ強いんやんな?」

「なんで、そう思うんだい?」

「だってな、白い服のお兄ちゃんの方が強いから、
 カオルお姉ちゃんの彼氏になれたんやろ?」

「え?」

「あはは、そうかもね。
 うん、たぶん、そうだよ」

零君は、はるちゃんの頭を撫でながら、笑って答えている。

「あれ? ねえ、はるちゃん、あっち・・・
 あれって、先生が呼んでるんじゃあないかな?」

「あ! ほんまや。
 そしたら、カオルお姉ちゃん、零お兄ちゃん、バイバイ」

「バイバイ」

「バイバイ、はるちゃん」

「さってと・・・  じゃあ、俺、昼飯も食べたし、ぼちぼち帰るかな。
 今から帰れば、十分夕方には戻れるはずだからさ」

「零君、今日はありがと」

「うん、じゃあね、カオルちゃん。
 また、遊びに行くから」

「うん」

そう言って、零君は帰って行った。


昼から、その日の終わる時間まで、会場の自分の絵のところで、観に来てくれたお客さん達と話をして過ごす。
自分の絵を観た人達から、絵を前にして、直接感想や話をすることなんて、滅多にないから、とても新鮮な楽しい時間だった。
1日だけだけど、来れて良かった、って思う。
作り笑顔なんかじゃあなくて、ずっと、心から笑って過ごせた貴重な時間だった。


全部終わって、ホテルに戻り、早めの夕食を取った後、外が暗くなった頃に、帰りの新幹線に乗る。
他の人達は、もう一泊して、明日の朝帰るから、わたしもそうしたらって勧められたけど・・・
でも、わたし、早く帰りたいんだ。
鋼牙の待ってるあの家に・・ すぐにでも帰りたい。
だって、もうあそこは・・ 鋼牙のいる家が、わたしの家だもの。
いいよね、鋼牙、そう思っても・・・

鋼牙、指令書が来たら、メールを入れるって言ってたけど、何も来ないってことは・・・
ゴンザさんだけでなく、鋼牙の携帯にも、駅に着く時間をメールする。
携帯をしまいながら、帰った時の、鋼牙の様子を想像してみる。 

鋼牙、待っててくれてる素振りなんて感じさせずに、いつも通りの顔をして。
でも、優しい目で口元に少しだけ笑みを浮かべて、わたしの大好きなあの声で、ひとこと、

「おかえり、カオル」

そう言って迎えてくれるんだろうな。
たぶん・・・







 2012_02_25

Comments

りのん様、こんばんは (^o^)丿 

京都のおはなしの続編は、すごく希望が多かったんです。
それで、けっこう早い段階で一応書き上がってはいたんですが、カオルの誕生日のはなしに絡めたくてずっと出番待ちしていました。
あれ書いて、これ書いて、その後、これをUPして・・・ と、欲張り過ぎた結果、こんな時期にUPという、とんまな事に。
今回、鋼牙ではなく、零君の登場~~
零君は、優しいんですよね、登場してもらうのは難しいけど、鋼牙とは違う彼なりの優しさがすごく好きです。
キュンしてもらえて、うれしいです。
それと・・・ カオルのことまで気付いてくれて、ありがと~です。
うれしい!
なな  URL   2012-03-01 00:34  

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